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この記事でわかること
- 多感覚統合(MSI)の基本的な仕組み
- 易刺激性(過敏な反応性)との関連性
- ASDなど発達障害における典型的なパターン
※診断や治療を定めるものではなく、一般向けの情報整理です。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
はじめに
この記事では「多感覚統合」と「易刺激性」の関係を整理しつつ、ASD当事者の視点から「同時処理の苦手さ」についての気づきを紹介します。
1. 多感覚統合とは
多感覚統合(multisensory integration, MSI)は、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚など複数の感覚入力を脳がまとめて処理し、ひとつの「まとまりある体験」として認識する仕組みです。
これにより、私たちは周囲の環境を効率よく、かつ正確に把握できます。
2. 易刺激性とは
易刺激性(irritability)は、感情・行動・神経系の過敏な反応性を意味し、
- 小さな刺激に過剰反応する
- 情緒が不安定になりやすい
- 衝動的・攻撃的な反応が出やすい
といった特徴が見られます。発達障害や感覚過敏、ストレス状態などでも出現しやすい傾向があります。
3. 多感覚統合の障害と易刺激性の関係
(1) 感覚過敏と負荷の増大
多感覚統合がうまくいかないと、個別の感覚刺激が統合されず、同時処理のオーバーロードが起きやすくなります。
- 例:人混みで「視覚情報+人の声+匂い+触覚刺激」がバラバラに入る
- 結果、統合しきれず情報が氾濫し、脳が過剰興奮(過覚醒)しやすくなる
(2) 情動系の活性化
脳の扁桃体や前頭前野は、感覚処理と感情調整の両方に関わっています。
統合が不十分な状態では、「予測不能な刺激」として認知されやすく、扁桃体が危険信号を過剰に発し、易刺激性(怒り・不安・苛立ち)が生じやすくなります。
(3) ASDなど発達障害における典型パターン
ASD当事者では「感覚過敏+統合困難+予測困難」がよく見られます。
その結果、多感覚環境で刺激が蓄積 → 閾値を超える → 易刺激性として爆発という流れになりやすいです。
「同時処理の苦手さ」ASD当事者の気づき
コミュニケーションとの関係
コミュニケーションの苦手さも、同時処理が弱いことと関係していると考えています。
複数の情報(相手の言葉、表情、文脈など)を同時に処理できないために、「心の理論」の習得が遅れがちになるのではと思っています。
こだわり行動との関係
こだわり行動も、他の情報を同時に扱えず、比較や切り替えが難しいことが背景にあると感じます(個人の感想)。
易刺激性への対処のイメージ
刺激の中で、特に負担になっている刺激情報を減らし、全体の刺激の総量を和らげることで、易刺激性を回避できる感覚があります。
個人差はありますが、「あなたの苦手なことをひとつ挙げてください」と言われたら、「同時に処理することが苦手」 と答えてしまうかもしれません。
まとめ
- 多感覚統合がうまく働かないと、刺激がまとまらず脳の負荷が上がる
- この負荷は扁桃体・自律神経系を介して、易刺激性に直結しやすい
- 「統合困難 → 感覚負荷増大 → 情動過覚醒 → 易刺激性」という間接経路でつながる
対策のヒントは、刺激の整理(減らすなど)・予測性の確保(比較するための同時処理を減らす)・段階的な練習(ちょっとずつ逐次処理をしてみる)などです。