この記事でわかること
- 「コミュニケーションが苦手」という表現の問題点
- 「(コミュニケーションで)苦手なパターンがある」という表現の利点
- 両者の違いを整理した比較表
- ASD当事者が感じる誤解のポイント
- より正確な自己理解につながる考え方
この記事の結論としては、
「コミュニケーションが苦手」という表現は範囲が広すぎて誤解を招きやすく、「(コミュニケーションで)苦手なパターンがある」と具体的に伝える方が、自己理解や周囲の理解、そして支援につながりやすいと私は考えた、という整理になります。
はじめに
似ているようで全く違う2つの表現
「コミュニケーションが苦手です」と「苦手なコミュニケーションのパターンがあります」。
一見、似たような言い方ですが、意味する範囲も、相手に伝わる印象も、大きく異なります。
私はASD当事者として、この違いを意識するようになってから、自分の困りごとを周囲に説明しやすくなったと感じています。
逆に、この違いを意識せず「コミュニケーションが苦手」を使っていた時期は、
- 「会話が嫌いな人」
- 「人と関わりたくない人」
と受け取られていたと思います。
そこでこの記事では、なぜこの二つの表現が別物なのか、どのように使い分けると誤解が減るのかを、「表現の範囲」「誤解の起こり方」「対策の導き方」という三つの視点から整理していきます。
※当事者視点の整理です。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
「コミュニケーションが苦手」という表現の特徴
まず、「コミュニケーションが苦手」という表現が、どのような特徴を持っているのかを見ていきます。
言葉の範囲が広すぎる
「コミュニケーションが苦手」という言葉は、対人スキル全体を指すように聞こえます。
しかし、実際には「どの場面で」「どんな会話で」困っているのかが、この表現からは見えてきません。
たとえば、次のような状況は、すべて「コミュニケーション」に含まれます。
- 1対1の会話
- 複数人での会話
- 雑談
- 業務連絡
- 指示を受ける場面
- 自分から説明する場面
- 感情のやり取りが中心の会話
これらすべてを「苦手」とひとくくりにすると、本当に困っているのはどこなのかが見えなくなってしまいます。
他者が誤解しやすい
「コミュニケーションが苦手」という言葉を聞いた相手は、多くの場合、次のような印象を持ちやすいです。
- 「会話が全部ダメな人」
- 「人と関わるのが嫌いな人」
- 「コミュ力が低い人」
さらに、支援者にとっても、この表現だけでは「どこをどう支援すればいいのか」が見えにくくなります。
課題の場所が特定できないため、適切な配慮や調整がしづらいと思います。
「事実」と「読み取れる可能性」の区別
ここで、「コミュニケーションが苦手」という表現を、「事実」と「読み取れる可能性」で分解してみます。
事実
- 特定のコミュニケーション場面で困りごとがある
読み取れる可能性
- 「コミュニケーションが苦手」という言葉だけでは、周囲が「全部難しい」と誤解するリスクがある
- 当事者の特性の課題が想定より広く読み取られ、支援や調整の方向性が見えにくい
「困りごとがある」という事実は共通して確かなのですが、「コミュニケーション全般が苦手」と受け取られる可能性も含まれてしまう、という整理になります。
そこで、「パターン」という切り口で見ると、実態に近い整理ができます。
「苦手なパターンがある」という表現の特徴
一方で、「苦手なパターンがある」という表現には、次のような利点があります。
具体的な困難点を示せる
「パターン」という言葉を使うことで、どの場面で困っているのかを具体的に伝えやすくなります。
たとえば、私の場合、次のような「パターン」で苦手と感じます。
- 雑談のように、話題や終わりが決まっていない会話
- 「適当にやっておいて」など、曖昧な指示
- 暗黙の前提(共有されている文脈)を含む会話
- 複数人の会話で、誰が何を言っているのかを追い続ける場面
- 相手の感情を読み取ることを前提とした返答
こうして具体的に示すことで、周囲も「ああ、この場面が難しいんだな」と理解しやすくなります。
さらに、自分自身も「どういう場面で疲れるのか」を整理できるため、対策を考えやすくなります。
一方で、1対1で構造のはっきりした会話(たとえば業務連絡や説明)は、私にとって困難が少ないと感じます。
原因の推測につながりやすい
パターンを具体的に示すと、なぜそのパターンが負担なのかを推測する手がかりも得られます。
たとえば、私が挙げた「パターン」を見ると、次のような共通点があります。
- 文脈を整理する処理が必要
- 同時に保持すべき情報が多い
これらは、ASDの情報処理特性と関係があると、私は理解しています。
こうして原因を推測できると、「では、どうすれば困難を減らせるか」という視点が生まれます。
両者の違いを整理する
ここまでの内容を、表で整理してみます。
| 項目 | コミュニケーションが苦手 | 苦手なパターンがある |
|---|---|---|
| 範囲 | 対人スキル全体を指すように聞こえる | 特定の場面や条件を示せる |
| 認識され方 | 会話全般が難しい人と受け取られやすい | 特定の場面で困難がある人と理解されやすい |
| 誤解の起こりやすさ | 高い(得意な場面も苦手に見られる) | 低い(困難な場面が明確) |
| 対策の導き方 | 漠然としていて手がかりが少ない | 具体的で工夫を考えやすい |
| ASD当事者の実感とのズレ | 大きい(実際は得意な場面もある) | 小さい(実態に近い) |
この表を見ると、「苦手なパターンがある」という表現の方が、誤解が少なく、実態に即していることがわかります。
ASD当事者の整理の例
ここで、ASD当事者の整理の例として
- 「体験と事実」
- 「気づいた考え」
- 「私の結論」
を紹介してみようと思います。
私の体験と事実
- コミュニケーションに困難が生じる場面がある
- 得意な場面・苦手な場面は分かれる
- 同じ「コミュニケーション」でも、条件によって、できるできないが大きく変わる
私の気づいた考え
- 私は、同時処理など、脳の処理スタイルの違いが、コミュニケーションの苦手さの原因かもしれないと考えた
- この場合、「コミュニケーションが苦手」という表現は、実態よりも範囲を広く伝えてしまうかもしれないと気づいた
私の結論
- 「苦手なパターン」を明確にすることで、支援や調整がしやすくなると思った
- 周囲の理解が深まることで、誤解が減る可能性もあると思った
このように整理をすることで、困りごとの対策や周囲に伝えることなどが、行いやすくなったと感じています。
まとめ
「コミュニケーションが苦手」という表現は、対人スキル全体を指すように聞こえるため、実際よりも広い範囲が苦手だと受け取られやすい、と私は考えています。
一方で、「苦手なパターンがある」という言い方をすると、次のような点でメリットがあると私は思っています。
- 困難な場面を具体的に示せると思います
- なぜ苦手なのか、整理や対策の検討につながりやすいと思います
- 周囲の理解が深まりやすく、誤解が減りやすいと思います
私は、この違いを意識してから、自分の困りごとを周囲に説明しやすくなりました。
また、「どの条件がそろうことが苦手なのか」も整理しやすくなりました。
「苦手な(コミュニケーション)パターンがある」と伝えることで、課題の所在がはっきりし、調整もしやすくなると私は感じています。
困ったときの相談先(公的機関)
- 「各自治体の発達相談窓口」→「※お住まいの自治体の公式サイトをご確認ください」
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- 「発達障害者支援センター」→「https://www.rehab.go.jp/ddis/」
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