「当事者の体験」コミュニケーション・心の理論

心の理論をトレーニング|カウンセリングで実感した成長

「当事者の体験」
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はじめに

ASD(自閉スペクトラム症)当事者にとって、「心の理論」は大きな課題の一つとされています。

心の理論とは、他者の気持ちや考えを推測する能力のことです。

しかし、私自身の経験から言えば、ASD当事者であっても、療育や経験を通じて心の理論は成長しうると実感しています。

実際に、研究や臨床の現場でも、ASD当事者が他者理解を学習する例が報告されています。

この記事では、私がカウンセリングや日常生活で学んだ、心の理論を鍛えるための考え方をご紹介します。

※診断や治療については、必要に応じて医師や専門家にご相談ください。


第1章 心の理論はASD当事者でも成長する

多くの情報では、ASD当事者は心の理論が苦手だと説明されています。

たしかに、生まれつきの特性として、他者の気持ちを推測することに困難を感じやすいのは事実です。

しかし、それは「成長しない」ということではありません。

私自身、日常での経験、そしてカウンセリングを通じて、少しずつ他者の視点を理解できるようになってきました。

臨床の現場でも、社会的認知訓練やメンタライジングを扱う心理療法の一部が、ASD当事者の支援に応用される例があります。

個人差はあるものの、心の理論は学習によって伸ばせる部分があると感じています


第2章 重要なのは「見落としている視点」を学ぶこと

ASD当事者が心の理論を鍛えるうえで、最も重要なのは、自分が見落としている視点を学習することだと思っています。

たとえば、会話の中で相手がどんな気持ちでいるのか、表情や声のトーンから推測することが苦手な場合、それを言葉で教えてもらうことで理解が深まります。

カウンセリングでの学び方

カウンセリングでは、「相手はあなたの反応からこう感じていたのでは?」と具体的に見落とした部分を指摘してもらえることがありました。

そうした気づきの積み重ねが、少しずつ他者視点を理解する力につながっていくのだと感じます。

カウンセラーという第三者の視点から、自分では気づけなかった相手の感情や意図を教えてもらえることは、貴重な学習機会でした。


第3章 心の理論をキャッチボールとお手玉に例える

ASD当事者の心の理論について、「キャッチボールとお手玉」に例えて考えてみます。

これはあくまで感覚的なたとえですが、自分の特性を理解するうえで役立っています。

キャッチボールのように、言葉やリアクションを1個ずつのボールのように投げたり受け取ったりすることは、おそらく多くのASD当事者もできます。

しかしASD以外の多くの人の場合、お手玉のように複数のボールを同時に手元で扱います。

さらにはその状態でキャッチボールのようにやり取りすることができるようです。

なので、私の実感としては、ASD当事者はお手玉が苦手で、どうしても落ちてしまうボールが出てくる状態です。

たとえば、会話の中で相手の言葉、表情、声のトーン、その場の空気感など、複数の情報をリアルタイムに処理することが求められる場面です。

つまり、手元でリアルタイムに扱うのが苦手な分、同時に扱う情報を事前に覚えることが出発点になると思っています。

多くの人は自然にこれをやっているため、何が落ちているのかを自覚することすら難しいと感じます。


第4章 まず「何が落ちているのか」を知ることから

心の理論を鍛えるうえで大切なのは、自分が何を見落としているのかを知ることだと思っています。

私の場合、カウンセリングで具体的な場面を振り返りながら

  • 「ここで相手は今いる場所を前提(ここが落としやすいボール)にこう感じていた」
  • 「この言葉にはこんな意図があり、多くの人が受け取りたくない言葉(ここが落としやすいボール)を避けて、あなたを傷つけないための言い換えだった」

と教えてもらうことで、少しずつ気づけるようになりました。

また、信頼できる人に「このとき私の反応はどうだった?」と率直に聞いてみることも有効です。

自分では気づけない視点を、他者からのフィードバックで知ることができます。

この時、家族など習慣がそっくりな相手より、少し離れた相手(支援者やカウンセラーなど)からフィードバックを受ける方が、客観的な視点を学習しやすい傾向があるかもしれません


第5章 焦らず、少しずつ積み重ねる

心の理論を鍛えることは、一朝一夕にできるものではありません。

私自身、まだまだ苦手な部分は多く、落としてしまうボールもたくさんあります。

それでも、カウンセリングや日常での経験を通じて、少しずつ成長していると感じています。

心の理論を鍛えることは「読心術」ではない

ここで大切なのは、心の理論は相手の考えを完璧に「当てる」力ではなく、相手に関心を向ける力でもあるということです。

完璧に相手の気持ちを理解できなくても、「相手はどう感じているだろう?」と考えようとする姿勢そのものが、コミュニケーションを豊かにすると感じています。

相手の心を読むことはできないので、時には間違うこともあります。

そういった場合、相手に謝罪したり、笑ってその場を済ませてしまう方が建設的だと思います。

大切なのは、焦らず、自分のペースで学んでいくことです。


まとめ

この記事のポイントをまとめます。

  • 心の理論はASD当事者でも学習によって成長させることができる
  • 自分が見落としている視点を知ることから始める
  • 焦らず自分のペースで、積み重ねていくことが大切

おわりに

ASD当事者にとって、心の理論は確かに難しい課題です。

しかし、療育や経験、カウンセリングなどを通じて、成長させることは可能だと私は実感しています。

まずは、自分が見落としている視点を知ることから始めてみてください。

キャッチボールで見落としているボールを1つずつ、ゆっくりと積み重ねていけば、少しずつ他者の気持ちを理解できるようになると思います。



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