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はじめに
心の理論(Theory of Mind)とは、「自分や他者にはそれぞれ独自の考えや感情、意図がある」と理解し、推測する力のことです。
この力があることで、私たちは「相手は今こう思っているのでは?」と想像しながら会話や行動を調整できます。
たとえば――
- 相手が驚いているから「知らない情報を伝えたんだな」と推測する
- 相手が黙っているから「怒っているのかも」と想像する
といったように、日常生活のやり取りの多くは心の理論に支えられています。
※本記事は診断や治療を定めるものではありません。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
サリー・アン課題について
ASD(自閉スペクトラム症)に触れたことがある人なら、一度は耳にしたことがある有名なテストが「サリー・アン課題」です。
ざっくり言うと――
- サリーがビー玉をかごに入れて去る
- サリーが留守の間に、アンがビー玉を自分の箱へ移す
- サリーが戻ってきたとき、サリーはどこを探すか?
この問いかけは、サリーの「思い込み/信念」を推測できるかを確認する課題の代表例です。
今の私自身は、この課題を解くことができます。
ただし、その解き方には「癖」があります。
「サリーの視点を拾う → 次にアンの視点を拾う」というように、順番に処理をします。
一度に複数の情報を取り扱うことが苦手なので、順番に追うほうが楽なのです。
0次/1次/2次の誤信念課題
- 0次→自分の考え・感情に気づく
- 「自分はお腹が空いた」と思っていることに気づく
- 1次→相手の考え・感情を推測する
- 相手が「そろそろお昼ご飯を食べたい」と考えているかもしれないと気づく
- 2次→相手が別の相手の考えをどう思っているかまで追う
- 自分とAさんとBさんという3人いる場面で、AさんはBさんが考えている「そろそろお昼だけど、みんな休憩しないのかな?」と思っていることに対して、Aさんが気づいているかもしれないと推測する
私はこの2次的誤信念がとても苦手です。
3人以上の人物や複数の視点が絡むと、情報が多すぎて混乱し、最終的に「1対1の会話の延長」のように振る舞ってしまいます。
心の理論はASDの「原因」なの?
ASDの認知を説明する仮説はひとつではありません。
- WCC(弱い中枢性統合):細部に注目するが、全体へまとめにくい処理スタイル
- EPF(知覚機能強化):細部に注目する情報処理を「強み」とみなす仮説
など、他にも仮説があります。
→現在は、これら複数の理論を組み合わせて理解するのが主流です。
「改善」はどこまで可能か?(当事者の実感)
私の経験では、一次的誤信念課題までであれば、現実の会話にも対応可能(個人差あり)です。
ただし、これは「改善」であって「治る」わけではありません。
さらに、「普通」と呼ばれる状態を目指すのは、他人のあいまいな物差しを追いかけるようなものなので、自分が納得できる範囲で調整するのが良いと考えています。
まとめ
サリー・アン課題は、心の理論の理解を考える出発点として有名です。
私自身の体験では、一次的なレベルまでは工夫で対応できても、複数人の複雑な会話になると難しさが残ります。
ASDの理解には「心の理論」だけでなく、WCCやEPFなど、複数の仮説を合わせて考えることが大切だと感じています。