はじめに|「ちゃんとしているつもり」なのに
ASD(自閉スペクトラム症)がある私にとって、言葉のやりとりそのものよりも、言葉以外の部分で誤解されることの方が多いかもしれません。
たとえば朝の挨拶で、私は「おはようございます」と声をかけたつもりです。
でも、作業をしたまま声だけ出してしまったせいで、「感じ悪い」と思われていたようです。
逆に、タイミングを見計らって声をかけたつもりが、「今それ?」と不思議がられることもありました。
本人は「できている」と思っているのに、相手には「違和感がある」ように映ってしまう。
そんな「ズレ」が、日常の中で積み重なっていくのです。
この記事では、当事者として感じる「誤解されやすい場面」と、私なりに試してきた工夫についてまとめていきます。
また、周囲の人にとっても、「なぜ誤解が起きるのか」を知っておくことで、関係がぐっと楽になることがあります。
当事者の視点を通して、お互いの理解を深めるきっかけになれば幸いです。
※診断や治療については、必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
どんな場面で誤解が生まれるのか|5つの典型例
① 表情が「冷たい」「怒っている」と思われる
私はリラックスしているつもりでも、相手には表情が冷たく感じられたり、怒っているように見えることがあります。
おそらく、落ち着いた状態が「無表情」や「不機嫌」に映ってしまうのだと思います。
私は表情を意識的に動かす習慣が弱く、ニュートラルな状態が「硬い表情」に見えやすいのかもしれません。
② 声の調子で「やる気がない」「興味がない」と受け取られる
話している内容に興味があっても、声の抑揚が少ないと「つまらなそう」「興味ないんだね」と誤解されることがあります。
逆に、特定の言葉を強調してしまい、「そこだけ気にしてるの?」と思われることも。意図していない「強調」が別の意味を与えてしまうようです。
これは、感情と声のトーンを自動で連動させにくく、内心の関心と声の表現にズレが生じやすいためではないかと感じています。
③ 視線の使い方で戸惑われる・誤解される
目を見て話すのが苦手で、よそを向きながら話していると「聞いてないでしょ」と言われます。
でも、がんばって目を見続けると、今度は「じっと見られて怖い」「好意がある?」と勘違いされることがあります。
どちらにしてもうまくいかない感覚があります。
「適度に目を合わせて、適度にそらす」という暗黙のバランスを自然に取るのが、私には難しいのだと思います。
④ 挨拶のタイミングや仕方が「そっけない」「無愛想」に見える
相手が見ていないタイミングで声をかけてしまい、気づかれないまま通り過ぎることがあります。
また、作業中に声だけで「お疲れ様です」と言うと、ちゃんと挨拶しているように見えないことがありました。
相手の状態や雰囲気を瞬時に読み取るのが苦手で、タイミングの最適化が難しいのだと感じています。
言葉と動作を同時に意識するにも労力がかかります。
⑤ 反応が遅れて「無視された」「拒否された」と思われる
質問されてから答えるまでに少し考える時間が必要で、その沈黙が「無視」や「嫌がっている」と映ることがあります。
冗談に気づくのが遅れて、少し経ってから笑うと「なんで今?」と不思議がられることもあります。
情報処理に時間がかかったり、文脈を理解するのに一拍必要で、反応速度が一般的な会話のリズムとズレやすいのだと思います。
誤解を減らすためにできること|当事者が試した工夫
① 信頼できる人にフィードバックをもらう
「今の挨拶、どう見えた?」と、身近な人に率直に聞くようにしています。
自分のつもりと見え方のズレが分かり、少しずつ直せるようになりました。
周囲の人へ:聞かれたら「こう見えたよ」と事実ベースで短く伝えてもらえると助かります。
② 言葉に「小さな動作」を添える
挨拶のとき、声だけでなく、軽く体を相手に向けたり、手元の作業を一瞬止めるようにしています。
それだけで、「ちゃんと挨拶してくれた」と受け取られやすくなりました。
③ 声をかける前に「相手の状態」を確認する
相手がこちらを見ているか、手が空いているかを少しだけ確認してから声をかけるようにしています。
忙しそうなら「今、少しいいですか?」を添えることで、「突然すぎる」と言われることが減りました。
④ 自分なりのルールを作って習慣化する
「挨拶のときは顔を上げる」「名前を呼んでから話しかける」など、シンプルなルールを作り、繰り返すようにしています。
毎回考えずに安定した対応がしやすくなりました。
周囲の人へ:一定のパターンで対応している場合、それは私にとっての安定した形であることが多いです。
まとめ
- 私は言葉以外の部分(表情・声・視線など)で誤解されやすい。
- 誤解の原因は、「自分のつもり」と「相手の受け取り方」のズレにあると感じている。
- 私に効果があったのは、
- 信頼できる人にチェックしてもらう
- 表情や動作を意識的に添える
- 相手の状態を見てから声をかける
- 自分なりのルールを習慣化する
- 完璧は目指さず、「少しずつ工夫する」くらいの気持ちで続ける。
- 周囲の人も「なぜそうなるのか」を知ることで、お互いの関係が楽になることがある。
おわりに|特性は「欠点」じゃない
ASDのコミュニケーションの特徴は、「治すべきもの」だとは私は思っていません。
特徴を理解して、ちょっとした工夫を重ねることで、誤解は減らせると感じています。
完璧なやりとりは誰にとっても難しい。だから、できる部分を少し工夫してみる。
それくらいの距離感で向き合うことが、日々を少しラクにする第一歩になりました。
困ったときの相談先(公的機関)
- 「各自治体の発達相談窓口」→「※お住まいの自治体の公式サイトをご確認ください」
- お住まいの福祉相談窓口では、発達特性に関する相談や支援の案内が受けられる場合があります。
- 「発達障害者支援センター」→「https://www.rehab.go.jp/ddis/」
- 特性に基づく相談ができ、生活・家族・就労など幅広い支援に対応しています。
※当サイトはこれらの運営団体とは直接の関係はありません。また、必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
関連記事

