「ASD理解」こだわり・常同行動

自閉スペクトラム症(ASD)の「こだわり」って何?│当事者視点で「好き」との違いを整理

虫眼鏡を見て考え込むイラスト。こだわりと好きの違いに気づく瞬間を表現をイメージしています。 「ASD理解」
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この記事でわかること

  • ASD当事者が「こだわり」をどう捉えているか
  • 「好き」と「こだわり」の違いを体験から比較
  • よく言われる「こだわり」の具体例
  • 当事者の日常での気づき
  • 周囲が知っておくとよいかもしれないこと

この記事の結論は、

私にとって「好き」と「こだわり」の違いは、「好き」は、よかったと感じた体験を繰り返し、意識してまた選んでいる感覚であり、「こだわり」は、そのときの感覚を再現することを重視し、他のパターンを検討する意識が弱くなっている感覚である、と私は考えています。


はじめに

ASD(自閉スペクトラム症)の特徴としてよく言われる「こだわり」。

診断時に医師から「こだわりがありますね」と言われて、最初はピンと来ませんでした。

私は「こだわりって、好きと一緒?」といったニュアンスで理解していました。

でも、振り返ってみると、「好きでやっていること」と「なんとなく決まっていないと落ち着かないこと」には、微妙な違いがあることに気づきました。

この記事では、「好き」と「こだわり」の違いを、当事者の体験から整理してみたいと思います。

※当事者視点の整理です。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。


「好き」と「こだわり」の違い(本棚の例で考えてみる)

たとえば、本棚の整理で考えてみます。

本が好きで「きれいに並んでいた方が気持ちいいな」と思って整理する。

多少ズレていても「まあいいか、また直せばいいや」と思える。

これは、私の理解では「好き」に基づいた行動だと思っています。

一方で、こんな感覚もありました。

  • ほぼ同じ商品があっても、いつものブランドの同じ商品以外は嫌、
  • 番号順など、いつものルール通りに並んでいないと気が済まない、
  • 本の並びがズレていると、なんだか落ち着かない、

これらは好きだからというより、「決まった通りでないと、なんとなく不安」という感覚に近いと感じます。

私が理解している限りでは、これが「こだわり」に近い行動なのかもしれません。


当事者視点の「好き」と「こだわり」の違い

私の体験を振り返って気づいたのは、次のような違いです。

もしかしたら違う可能性もありますが、私の整理では以下のようになります。

「好き」は、過去から続いていて、自分の中でよいイメージが繰り返されているものだと感じます。

「これがおいしかった」「これが心地よかった」という体験が繰り返しあって、それを選んでいる感覚です。

「こだわり」は、もともとそれ以外を考えていないようなもので、比較せずにそのまま続いちゃっているものだと思います。

少なくとも私の場合は、比較してから選ぶという発想があまり強くなく、気づいたら同じことを繰り返している感覚があります。


よく言われる「こだわり」の具体例

ASDの「こだわり」について、医療機関や支援サイトでよく紹介されている例をいくつか挙げてみます。

  • 物の配置や順番へのこだわり
    • 物が決まった位置にないと落ち着かない
  • 決まった手順やルールへの固執
    • いつもと同じ順番でないと不安になる
  • 同じ行動の繰り返し(常同行動)
    • 体を揺する、回転する、手をひらひらさせるなど
  • 特定のものへの強い執着:特定の物や人に強くこだわる
  • 同じ道順、同じ場所へのこだわり
    • いつもと違う道を通るのが嫌
  • 儀式的な行動
    • 外に出るときはドアを3回まわる、など決まった動作をする
  • 決まった言葉の繰り返し
    • 同じフレーズを何度も言う
  • 変化を極端に嫌う
  • 予定変更や環境の変化に強い抵抗を示す

私の場合、典型的な「儀式的な行動」や「常同行動」は当てはまらないと思っていました。

といっても、周りから見るとあるようなのですが、ここでは触れずに秘密にします。

他に、もっと日常的で気づきにくい形で「こだわり」があったことに、後から気づきました。


ASD当事者の気づき

私の中にあった「こだわり」

私は、典型的な「こだわり」や「儀式的な行動」は、自分に当てはまらないと長い間思っていました。

でも、振り返ってみると、小さいころから気づかないうちに繰り返している行動が一つありました。

マクドナルドでの注文

たとえば、マクドナルドの通常のハンバーガーが大好きで、いつも決まった数を買っていました。

ピクルスが好きで選んでいた部分もあったのですが、それ以上に「いつもと同じメニュー」が決まっていないと、ほんの少し不安になっていたと記憶しています。

よく考えると、他の飲食店でも、いつも同じメニューを同じ頼み方でしていました。

その後、ハンバーガーの値段が上がったときに、たまたまビッグマックを食べたら、とてもおいしくて驚きました。

今はビッグマックの方がおいしいと感じます。

でも、気づいたらビッグマック以外を選択肢として選ばなくなっちゃったんです。

結局、同じことをしているのかもしれません。

他のメニューと比較するより、いつものメニューが安心で繰り返している感じがあります。

また、選ぶときに時間がかかってしまい、すぐに選べるいつものメニューを選択している感覚もあります。

服の選び方

また今でも、特別にデザインが好きというわけでもないのに、同じ型の服を色違いで揃えて、同じ順番で着ています。

洗濯の都合でローテーションの順番がずれると、大きな混乱まではいかないものの、やはり落ち着かない感覚があります。

気づいたこと

こうして振り返ると、「毎日必ず必要」というほどのものではなくても、自分の中で自然と繰り返している行動があることが分かりました。

表向きには「好き」や「習慣」のように見えても、実は「いつも通りでないと、安心出来ない気がする」という感覚が背景にあったり、「なぜか他の選択肢を検討していない」ということがあるのかもしれません。


周囲が知っておくとよいかもしれないこと

これは私の体験からの気づきですが、「こだわり」を否定されると、本人にとって大きなストレスになることがあります。

もし周囲に「こだわり」がある方がいたら、こんな工夫が役立つかもしれません。

  • 全てを変えようとしない
    • 問題が無く、安心できる「こだわり」はそのまま残す
  • 選択肢を用意する
    • 「AかBのどちらにする?」といった、選択肢を絞った柔軟な提案
  • 事前予告をする
    • 予定変更は突然ではなく、可能性の予告だけでも前もって伝える

ただし、これらも個人差が大きいので、医師や専門家に相談したり、ご本人とコミュニケーションを取りながら調整していくことが大切だと思います。


まとめ

  • 「好き」は、よいイメージが繰り返されて選んでいるもの
  • 「こだわり」は、なぜか再現のように繰り返しているもの
  • ASD当事者にとって「好き」と「こだわり」は重なり合うこともある
  • 周囲は「直す」ではなく「尊重しつつ調整する」ことが大切だと感じる

私の体験をもとに整理した内容ですが、同じASDでも全く別の形であらわれることもあります。

こだわりは、「直す」ではなく「どうすれば安心して過ごせるか」を一緒に探していく姿勢が大切だと感じています。