この記事でわかること
- ASDが「情報量」に弱い理由(脳の処理特性)
- 情報過多で起きる3つの困りごと(作業・会話・こだわり)
- 「情報を削る」具体的な工夫(体験ベース)
- 情報量を3つの軸で整理する方法
この記事の結論としては、
ASDの困りごとの多くは「同時に処理できる情報量の限界」に由来し、①作業を最小単位にする、②情報と感情を分けて考える、③こだわりの構造を分解する、という「情報を削る工夫」で改善できる、という整理になります。
はじめに
なぜASDは「情報量」に弱いのか
- 「ミスが多い」
- 「会話が噛み合わない」
- 「こだわりが強すぎる」
こうした発達特性の困りごとを解決したいとき、私がいつも意識していることがあります。
それは、余計な情報を削ることです。
ASDの脳は、同時に処理できる情報の量が限られています。
一度に複数のことを考えたり、感じたり、判断したりすると、どこかが抜け落ちてしまうんです。
しかし、最初は「どの情報を削ればいいのか」がわからず、ただ混乱するばかりでした。
そこでこの記事では、私が実際に試してきた「情報を削る工夫」を、
- 作業
- コミュニケーション
- こだわり
の3つの場面から整理します。
「ASDは情報処理が苦手」という説明は多くあると感じます。
しかし、具体的にどう対処すればいいのかを体験ベースで整理した記事は少ないと感じています。
この記事では、「情報量」という視点から、ASDの困りごとを分解して考えていきます。
※当事者視点の体験です。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
ASDが「情報量」に弱い理由
私が感じているのは、ASDの脳は、同時処理(マルチタスク)が苦手です。
これは「努力不足」や「性格」ではなく、脳の情報処理の特性に由来していると思います。
たとえば、次のような状況を想像してみてください。
- 作業の手順を覚えながら、同時に別のタスクも進める
- 会話の内容を理解しながら、相手の表情や場の空気も読む
- 予定通りに進めたいのに、突然の変更に対応する
一般的には「当たり前にできること」かもしれません。
しかし、ASD脳にとっては、複数の情報が同時に流れ込むと、処理が追いつかなくなると感じます。
その結果、ミスが増えたり、会話がずれたり、こだわりが出たりすると考えています。
つまり、情報量が多すぎることが、困りごとの根本原因になっているケースが多いと、私は考えています。
情報過多で起きる3つの困りごと
私の体験では、「情報量の多さ」が原因で困りごとが起きやすい場面は、主に次の3つです。
作業でミスが多くなる
複数のタスクを同時に進めようとすると、どこかで抜け漏れが発生します。
特に「効率を上げよう」と思って、複数の作業をまとめて片付けようとすると、かえってミスが増えました。
コミュニケーションで噛み合わなくなる
会話の内容だけでなく、相手の表情や声のトーン、場の空気など、複数の情報を同時に処理しなければならない場面で混乱しやすいです。
どれか一つに集中し過ぎて、結果的に「話が通じない」状態になることがありました。
こだわりがある
実は情報を整理しきれず、選択肢を増やせなくなっていることが多いと思っています。
たとえば、私は
- 「ハンバーガーが食べたい。ほかはイヤだ」
という日があります。
以前と同じ結果を求めるために、「当時の情報」から再現するために導き出した答えとして、その選択に執着している状態なのだと思います。
情報を削る3つの工夫
それでは、具体的にどうすれば「情報を削れる」のでしょうか。
私が実際に試して効果を感じた工夫を、3つの場面から紹介します。
作業でミスが多いとき
手順を最小単位に分ける
私は仕事中、しばしば「抜け漏れ」がありました。
最初は「効率を上げるために、まとめて片付けよう」としていました。
ですが、実際にはその「まとめ作業」がミスを増やしてしまいました。
たとえば、次のようなことをしていました。
- 複数のタスクを同時に進める
- 一つの作業の中に「ついでに」別の作業を入れる
こうした工夫は、表面的には効率的に見えます。
しかし、私のASD脳の場合は、情報量が増加するだけでした。
そこで、私は一つの作業を「最小限の単位」で区切り、それを繰り返して「自動化」するようにしました。
一つの作業は一つの目的だけにする
この方法を続けると、作業のたびに頭で考える必要が減り、結果的に無意識でできることが増えて、時間も短縮されました。
つまり、「まとめるより分けるほうが効率的」だったのです。
コミュニケーションで噛み合わないとき
情報を分けて考える
私は自分のASD特性は、会話の内容だけでなく、
- 相手の表情や声のトーン、
- 場の空気など、
複数の情報を同時に処理しなければならないときに混乱しやすいと感じます。
私はその「混ざる情報」を、あえて分けて考えるようにしました。
- 会話の内容 は「情報」
- 相手の表情・状況 は「感情」
この2つを別レイヤーで扱うようにしたのです。
しかし、リアルタイムで両方を処理するのは難しいと感じました。
そこで、相手の表情や状況については、あとで振り返って学習しました。
やり方としては、内容に表情を結び付けて、一つのパターンとして蓄積していくことです。
カウンセリングなどを利用して、その「読み取り方」を一緒に整理してもらった経験もあります。
それ以来、自分の発言と相手の反応が以前より噛み合うようになり、よくあるコミュニケーションのつまずきが減った気がします。
もちろん、今でも完全に噛み合わないことは何度でもあります。
でも、「どこまでを目指すか」を決めておくことで、心の消耗は減りました。
コストパフォーマンスの良い範囲で頑張る、それで十分だと思っています。
こだわりで融通がきかないとき
代替パターンを持つ
私は、時々「こだわり」が強く出ます。
たとえば、「どうしてもハンバーガーが食べたい。ほかはイヤだ」という日があるのです。
そんなとき、ある日ふと思いました。
「ハンバーガーを構成しているものは何だろう?」と。
パン、ケチャップ、パティなど。
「その3つがあれば、それなりに満足するのでは?」と思い、実際にパンとケチャップだけを食べてみたところ、意外と落ち着きました。
この体験から、私はこだわりの「構造」を分解するという方法を使うようになりました。
- 本当に欲しいのは「ハンバーガー」という形式?
- それとも「味」や「食感」という体験?
自分に問い直すことで、代替の満足ルートが見えることがあります。
もちろん、これは私個人のやり方ですが、「代替パターンを持つ」ことが、こだわりの硬直をゆるめる鍵になると思います。
情報量を3つの軸で整理
「情報量」の問題は、次の私が考えた3つの軸でほぼ説明できると考えています。
| 軸 | 情報を削る工夫 | 削らないとどうなるか |
|---|---|---|
| 作業 | 最小単位に分ける | 抜け漏れ・ミスが増える |
| 会話 | 情報と感情を分ける | 噛み合わない・誤解される |
| こだわり | 構造を分解して代替を探す | 融通がきかない・固まる |
自分がうまくいかなかった場面を思い出して、作業・会話・こだわりのどこで負担を感じていたのかを振り返ってみると、整理がしやすくなると思います。
「全部ダメ」ではなく、「特にここがきつかった」という視点で考えると、次の工夫のヒントになるかもしれません。
作業の軸
「最小単位に分ける」
作業を細かく分けることで、一つの作業に必要な情報量が減ります。
たとえば、「メールを確認して、返信して、ファイルを添付する」という作業を
- メールを確認する(この時点では返信しない)
- 返信を書く(この時点では添付しない)
- ファイルを添付する
というふうに分けると、それぞれの作業が「自動化」しやすくなりました。
最初は面倒に感じるかもしれませんが、慣れると考えなくても動ける状態になり、結果的に速くなります。
会話の軸
「情報と感情を分ける」
会話を「内容(情報)」と「状況(感情)」の2つに分けて考えることで、処理する情報が整理されます。
たとえば、会話の最中は「内容」だけに集中し、「相手の表情」や「場の空気」はあとで振り返る、という方法です。
もちろん、リアルタイムで両方を処理できたほうが理想ですが、私には難しいので、できる範囲で分けて学習するスタイルにしました。
カウンセリングで「あのときの相手の反応は、こういう意味だったのかもしれない」と一緒に整理してもらうことで、少しずつ読み取れる範囲が広がりました。
こだわりの軸
「構造を分解して代替を探す」
こだわりが強く出るとき、「これじゃないとダメ」という状態は、実は選択肢が見えていないだけかもしれません。
たとえば、「ハンバーガーが食べたい」というこだわりを分解すると、
- パンの食感
- ケチャップの味
- パティの満足感
というふうに、構成要素が見えてきます。
そうすると、「パンとケチャップだけでも満足できるかも」という代替ルートが見つかることがあります。
もちろん、こだわりが強すぎて代替が効かない日もあります。
でも、「いくつかの選択肢を持っておく」ことで、こだわりに縛られすぎず、少しだけ楽になることがありました。
まとめ
情報を削ることは、自分を守ること
具体的にどう対処すればいいのかまで整理された情報は少ないと感じています。
- 3つの軸(作業・会話・こだわり)で分解すると理解できた
- 情報を削ることは我慢ではなく、脳に合わせた設計と感じた
- 「最小単位」「分けて考える」「構造を分解」が鍵と理解した
「情報量を減らす」ことが、私にとっての最大の支援でした。
情報を削るとは、我慢ではなく、自分の脳に合わせて設計し直すことだと、私は思っています。
困ったときの相談先(公的機関)
- 「各自治体の発達相談窓口」→「※お住まいの自治体の公式サイトをご確認ください」
- お住まいの福祉相談窓口では、発達特性に関する相談や支援の案内が受けられる場合があります。
- 「発達障害者支援センター」→「https://www.rehab.go.jp/ddis/」
- 特性に基づく相談ができ、生活・家族・就労など幅広い支援に対応しています。
※当サイトはこれらの運営団体とは直接の関係はありません。また、必要に応じて医師や専門家にご相談ください。

