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ゲーム依存と楽しむことの違いを整理|ASD当事者とマインクラフト

「当事者の体験」
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この記事でわかること

  • ゲーム依存(ゲーム障害)とはどういう状態か
  • ASDとゲーム依存の関係
  • マインクラフトを例にしたメリット・デメリット
  • デメリットをあえて「練習」とした考え方
  • 専門家に相談した方がよさそうな目安

この記事は、ゲームは工夫次第で「日常生活の練習」として活かせる場面があることと、相談の目安を整理した内容です。


はじめに

長時間のゲームは、ふとした瞬間に「これはゲーム依存なのでは?」と不安になることがあるかもしれません。

特にASD(自閉スペクトラム症)の当事者や家族は、「ASDはゲーム依存になりやすい」といった情報を目にすることもあり、心配になりやすいと思います。

私自身、気にしなければ何時間もゲームを続けてしまい、「やりすぎた」と後から反省することがしばしばありました。

ただ、長時間ゲームをしたからといって、それがそのまま「依存」や「困る」とイコールになるとは限らないと感じています。

そこでこの記事では、まずゲーム依存(ゲーム障害)の定義を簡単に確認したうえで、マインクラフトを例に

  • メリットとして感じている点
  • デメリットとして出やすい困りごと
  • そのデメリットをあえて「練習」に変えていく視点

を整理してみます。

※当事者視点の整理です。診断や治療を代替できません。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。


ゲーム依存(ゲーム障害)とは?

WHOのICD-11では「ゲーム障害(Gaming disorder)」として、次のような状態が定義されています(WHO:Gaming disorderの解説より)。

  • ゲームのコントロールが効かない
  • 他の活動よりゲームを優先してしまう
  • 生活に悪影響が出ているのに、続けてしまう

これらの状態が「通常は12か月以上」続き、学校・仕事・家庭生活などがはっきり損なわれている場合に、ゲーム障害として診断され得るとされています。


また、症状が非常に重い場合には、12か月未満でも診断されることがあるとされています。

つまり、

  • 単にゲーム時間が長い
  • 休日にまとめて遊ぶことがある

といっただけでは、基本的にはゲーム障害には該当しません。


ASDとゲーム依存の関係

ASD当事者は、一般よりもゲーム依存のリスクがやや高いとされる研究があります(PMC:Gaming Disorder in Adults with Autism Spectrum Disorder)。

ある研究では、ゲーム障害の基準を満たした人の割合が

  • ASD群 約9%
  • 定型発達群 約3%

と報告されています。

一方で、ASD群でも「9割近くの人はゲーム障害に該当していない」ことになります。

ASDの特性として

  • 規則性・ルールへの強い関心
  • 同じパターンを繰り返すことの好み
  • 得意な分野には強く集中する傾向

などがあり、ルールがはっきりしていて、数字や構造が分かりやすいゲームとは相性が良い場面が多いと感じます。

そのため

  • 熱中しやすい
  • 長時間プレイになりやすい

という傾向はあり得ますが、それがそのまま

「ASD=ゲーム依存」

と直結するわけではありません。

大切なのは

  • 統計的にリスクは少し高い
  • ただし大多数はゲーム障害ではない
  • 自分の生活全体にどの程度影響が出ているか

という点を切り分けて考えることだと思います。


マインクラフトを例とした「メリット」

ここからは、私がよく遊んでいた「マインクラフト」を例に、ASD当事者として感じていることをまとめます。

「ゲームばかりして、何の役に立つのか」という視点もあると思いますが、適切な範囲であれば、次のような「役立つ側面」もあると感じています。

  • 「空間のイメージを扱う経験」
    立体的な空間を頭の中で把握しながら、建物や地形を整えていく経験を繰り返せます。
  • 「因果関係やルールの理解」
    この素材とこの素材を組み合わせると、このアイテムになる、というルールが明確で、因果関係を試行錯誤しやすい場面が多くあります。
  • 「計画を立てる練習」
    夜になると敵が出る、遠くに行くと迷いやすいなど、ゲーム内の条件を踏まえて、どの順番で準備するかを考える必要があります。
  • 「失敗からやり直す試行錯誤」
    建築に失敗しても壊して作り直せますし、敵に倒されても拠点を整えておけば立て直せます。現実よりも、ミスからのやり直しがしやすい環境です。

これらは、あくまで「私自身の体感として、こういう点が意外と役に立っているように感じる」というレベルの話ですが、単に「時間の浪費」と言い切れない部分もあると考えています。


マインクラフトを例とした「デメリット」と、それを練習に変える視点

一方で、マインクラフトの楽しさや安心感は、そのまま「デメリット」にもなり得ます。

ここからは

  • まず、実際に困りやすいポイント
  • そのうえで、あえて「練習」という視点に変えるとどうなるか

という順番で書いていきます。

この部分は、とくに「私自身の感覚と工夫」に基づく話になります。


1.終わりどころが見つかりにくい

マインクラフトは、自分で目標をいくらでも増やせるゲームです。

「この家ができたら終わりにしよう」と決めたつもりでも

  • 周りの地形も整えたくなる
  • 畑も作りたくなる
  • 自動化装置も置きたくなる

など、やりたいことが次々と出てきます。

気づくと数時間が経っていて「今日は別のことをやる予定だったのに」と後から反省することがあります。

練習としての捉え方


ゲーム内だけで完結させず

  • ゲーム内のやりたいこと
  • 現実世界でその日に必要なこと

を並べてみて「全部はできない前提で、どれを優先するか」を選ぶ練習だと位置づけることもできます。

もちろん、現実の予定を後回しにして良いわけではありませんが、優先順位をわざと意識してみる場として利用する、という考え方です。


2.ゲーム内のタスクが、現実のタスクを押し出す

マインクラフトをしていると、頭の中が

  • 次に集める資源
  • 建物のレイアウト
  • 敵が湧かないようにする工夫

などのゲーム内の計画でいっぱいになることがあります。

その状態になると、現実の予定ややるべきことが一時的に「頭の外に押し出される」ような感覚になることがあります。

練習としての捉え方

ゲーム内のタスクだけではなく

  • 今日はどれくらいゲームに使うか
  • その中で何をやるか

を先に紙やメモアプリで書き出しておき、時間配分を意識的に決める練習として使うこともできます。

ここでうまくいかなくても「じゃあ次はもう少し短くしてみよう」と調整していくことで、日常生活全体の時間の感覚をつかむヒントになるかもしれません。


3.過度な集中による疲労

長時間プレイを続けていると、終わったあとに

  • 頭が疲れている
  • 他のことをやるエネルギーが残っていない

と感じることがあります。

その結果

  • ゲームをやめた途端に動けなくなる
  • 残りの時間をほぼ何もせず過ごしてしまう

という状態になることがあります。

練習としての捉え方

自分に合う

  • ひと区切りのプレイ時間
  • 休憩のとり方

を試行錯誤する場として使うこともできます。

例えば

  • 1時間ごとに必ず立ち上がる
  • セーブポイントや作業の区切れ目で、一度コントローラーから手を離す

などを試してみることで、自分にとって「疲れすぎない上限」を見つける材料になるかもしれません。


4.現実よりゲームの世界の方が扱いやすいと感じやすい

現実の人間関係や学校・仕事には

  • 予測しづらい出来事
  • 人の感情や場の空気を読む場面

が多く含まれています。

それに比べて、マインクラフトの世界は

  • ルールが一定
  • 自分のペースを崩されにくい
  • 状況がブロックや数値で把握しやすい

という意味で、とても扱いやすく感じることが多いです。

この差が大きくなると

  • 外に出るよりマインクラフトをしていた方が楽
  • 人と関わるよりワールド作業を進めていた方が安心

という方向に傾きやすくなります。

「練習としての捉え方」
マインクラフトにはマルチプレイのモードがあり、他の人と同じワールドで遊ぶこともできます。

興味のある内容だからこそ

  • 協力する必要がある
  • 作業を分担する必要がある
  • 最低限のコミュニケーションをとる動機が生まれる

といった場面が出てきます。

現実の雑談が苦手でも、共通の目的がある環境の中で「必要な情報だけやり取りする」経験を積むことは、コミュニケーションの練習になり得ると感じています。

もちろん、オンラインはオンラインで疲れる場面もあるので、無理に広げる必要はありませんが「興味のあるゲームを通してなら、人との関わりでできることが少し増えるかもしれない」という程度の捉え方はできると思います。


専門家に相談する目安

ここまで書いてきたように

  • 長時間ゲームをする
  • ASD当事者としてゲームを特に好む

というだけでは、すぐにゲーム障害とみなされるわけではありません。

一方で、次のような状態が「数か月以上続いている」場合は、ゲーム依存の専門外来や主治医など、専門家への相談を検討してよいと思います。

  • 「睡眠が崩れている」
    慢性的な寝不足や昼夜逆転が続いている
  • 「学校・仕事に影響が出ている」
    遅刻や欠勤が増えている、成績や仕事のパフォーマンスが目に見えて落ちている
  • 「人間関係でトラブルが続いている」
    家族とゲームをめぐって何度も激しい衝突が起きる、約束をキャンセルすることが増えている
  • 「自分でもコントロールできないと感じている」
    やめたい・減らしたいと思って何度も試したが、ほとんどうまくいっていない
  • 「ゲーム以外のことをほとんど楽しめない」
    ゲームをしていないと強いイライラや不安が出て、他の趣味にほとんど興味が持てない

こういった問題が当てはまり、しかも長く続いている場合は「自分一人で何とかする段階を超えている可能性」もあるので、専門家に相談して状況を整理してもらうのが良いと思います。

一方で、こうした問題が当てはまらず

  • 学校や仕事に大きな支障が出ていない
  • 生活全体としては回っている

という場合には「長時間ゲームをしているという事実だけで、ただちに病気だと決めつける必要は低い」と考えています。

とはいえ、不安が強いときや、家族との間で見解が食い違っているときなどは

  • 主治医
  • 発達障害支援センター
  • ゲーム依存を扱う外来

などに相談し、第三者の視点で整理してもらうのも一つの選択肢です。


まとめ

  • ゲーム依存(ゲーム障害)とは、コントロールが効かず生活が損なわれている状態が通常12か月以上続く場合に診断され得るものとなっています
  • ASD当事者はリスクがやや高いが、大多数はゲーム障害に該当しないようです
  • マインクラフトには空間認識・計画性・試行錯誤などの体験をできると感じます
  • 場合により、現実タスクの後回しなど「デメリット」も生じることがある
  • その「デメリット」を「練習の場」として活用できる可能性もある
  • 睡眠・仕事・人間関係などが長期的に気になる場合は、専門家への相談を検討する

生活が回っている場合、長時間ゲームという事実だけで、必ずしも病気だと考える必要性は高くないと感じています。



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