ASD当事者が語る|表情が読めない感覚と対応のコツ

ASD

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この記事でわかること

  • ASDにおける「表情が読めない」感覚の具体像
  • 言語と非言語(表情・しぐさ・声の調子)を同時処理しにくい理由のイメージ
  • パターン学習で対応しやすい範囲と、難所として残りやすい部分
  • 場面や関係性によって変わる配慮点(権力距離・文化差・オンライン等)
  • FAQ(どこまで対応できるのか、何を目安にするか)

※診断や治療を定めるものではなく、一般向けの情報整理です。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。


はじめに

ASD(自閉スペクトラム症)当事者の視点から、表情が読めないときの体感と、毎日のコミュニケーションで使いやすい対応のコツを紹介します。


前提|個人差と複合要因について

表情の読み取りは、同時処理の負荷だけで決まるわけではありません。語用論のズレ、相手との関係性、場の雰囲気や時間の余裕、疲労や体調、薬の影響、文化差など、いくつかの要因が重なってブレやすいことがあります。

ここでは私の体験をもとに一般向けに整理しますが、すべてのASDに同じように当てはまるわけではありません。診断や治療を意図するものでもありません。


言葉と非言語情報の「同時処理」がむずかしい理由

私は、小さいころから「相手がこちらを向いて何かを訴えている」こと自体には気づけていました。

ただ、言葉と表情・しぐさ・声の抑揚といった複数の手がかりを、ひとかたまりの情報としてまとめるのが苦手だと感じます。

先に目に入った細部や、知っているサインに注意が引き寄せられてしまい、他の大事な合図を取りこぼすことがあります。

私の場合は「聞く(言語情報)」と「見る(非言語情報)」を交互に切り替えている感覚があり、その切り替えのタイミングでズレたり、拾えない情報が出てしまう感じがあります。


苦手でもパターン学習は助けになる

挨拶、謝意、軽い同意など、定番のコミュニケーションは「この場面=この反応」と紐づけると再現しやすくなることがあります。細部から全体へ橋をかけるイメージで、対応力が上がることがあります。

一方で、スクリプト(型)を増やしすぎると疲れやすく、少し場面が変わっただけで転用しづらくなることもあります。

私は同時に運用する型をしぼり、まず汎用性の高い型から整えるやり方が合っていると感じました。

たとえば「顔見知りの人にその日に最初に会ったら、まず挨拶を一言」のように、小さく決めておくと動きやすいです。


表情が読めないときの体感と、よく出る反応

表情を読むつもりでも、ふと背景や別の細部に目が行ってサインを見逃すことがあります。

分からない感情に直面すると、手持ちの知識に当てはめて推理しますが、ぴったり来ないと世界が一時停止したように感じることがあります。

個人差があり、反応は人それぞれです。

反応として、固まる、笑ってやり過ごす、話題を変える、視線が泳ぐ、メモを確認するなど、どれも「とりあえず安全に場を進める」ための自然な反応に入ると思います。


全体把握のしづらさとDCDの類似感(比喩)

会話は複数の要素が同時に動くので、全体の同時把握がしづらいと、少し時間が経ってから答えに気づくような遅れが出やすいです。

私は、発達性協調運動障害(DCD)に見られる不器用さに似た体感を、会話でも覚えることがあります。

これはあくまで私の比喩です。臨床的な因果を断定する意図はなく、「会話でも動作のようにぎこちなさが出ることがある」という感覚の説明として書いています。


FAQ(よくある質問)

Q1. 表情が読めない時は、どんなことが起こる?

相手の感情がすぐに浮かばず、言葉と組み合わせるのに時間がかかったり、誤解が生まれたりします。

情報が足りないと感じて、やむを得ずコミュニケーションが一時停止することもあります。

無関心というより、言語・表情・文脈の同時処理に苦手さが出やすい、という感覚に近いです。

Q2. まったく分からないわけではないのですか?

状況によります。表情の明瞭さ、時間の余裕、文脈の量、相手との関係性などで分かりやすさが変わります。

はっきりした表情は分かりやすい一方、微妙なニュアンスや素早い切り替えでは遅れや勘違いが起こりやすい傾向があります。

Q3. 対応力は上げられますか?

上げられることあります。

定番パターンの学習、確認の言い方の準備、要約してから確認する手順などで、やり取りが安定しやすくなります。

ただ、場面の変化や文化・個人差もあるため、完全に同じ読みを目指すのはむずかしいことあります。

Q4. どこまで対応できるのか、例はありますか?

到達しやすい例としては、挨拶や謝意、困惑、驚きといった基本的なサインを把握して、短い確認を添えるところまでです。

リアルタイムでの難所として残りやすいのは、本音と建前、軽い皮肉、社交辞令、短時間の空気の読み替えなどになると思います。

対応については、個人差も大きいです。


まとめ

  • ASDの「表情が読めない」は、同時処理だけでなく、語用論・関係性・時間の余裕・体調・文化差などが重なって揺れやすい。
  • 目に入る細部や既知のサインに注意が偏り、他の合図を取りこぼしやすい。
  • 定番の場面は「この場面=この反応」で対処しやすい。

完璧に読むことを目指すより、わからない時はオウム返しをするなど、相手からゆっくりと情報を再度引き出すようにすることで、コミュニケーションを理解しやすくなったと個人的に感じたことがありました。これを繰り返すと、日常の会話は少し上達するような気がします(個人差あり)。


おわりに

この記事では、当事者としての体感と、実際に役立ったコツをまとめました。

人や場面によって変わりますが、まずは自分に合う小さな型から、無理なく続けられる範囲で試し、合うものを少しずつ残していければ十分だと思います。


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