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この記事でわかること
- ASD(自閉スペクトラム症)とBPD(境界性パーソナリティ障害)の違い
- 両者の共通点と誤解されやすいポイント
- ASD当事者視点の気づき
※この記事は診断や治療を定めるものではありません。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
はじめに
「自閉スペクトラム症(ASD)」と「境界性パーソナリティー障害(BPD)」は、どちらも人間関係や感情面での困難さが関わるため、外から見ると似ているように思われることがあります。
しかし、背景や特徴は異なっており、正しく理解することが大切です。
ここでは、ASDとBPDの共通点と相違点を整理して紹介します。
共通点:混同されやすい理由
- 対人関係が安定しにくい
- 感情が急に強く揺れ動くように見える
- 衝動的な行動に出ることがある
- 自分や他者に対する理解のずれから誤解やトラブルが起きやすい
こうした表面的な共通点があるため、臨床現場でも「ASDかBPDか」で判断が難しいケースがあるそうです。
違い① 発達歴の違い
- ASD(自閉スペクトラム症)
- 幼少期から一貫して、社会的コミュニケーションや想像力、感覚処理に特徴が見られる
- 生まれつきの発達特性として説明される
- BPD(境界性パーソナリティー障害)
- 幼少期には目立たない場合もあり、思春期以降に顕著になることが多い
- 養育環境や人間関係の影響(見捨てられ不安やトラウマなど)が背景にあるといわれている
違い② 衝動性の質
- ASD的な衝動
- 全体の状況をうまくまとめられず、部分的な情報や目の前の刺激に反応しやすい
- 理解が追いつかず「反射的に動いてしまう」ケースが多い
- BPD的な衝動
- 状況を理解していても、強烈な怒りや不安など感情が理性を圧倒する
- 「やめた方がいい」と分かっていても感情が勝ち、行動を止められないことがある
違い③ 感情や対人関係のテーマ
- ASD
- 感覚過敏や予想外の変化に弱い
- 対人関係の困難は「相手の意図を読み取りにくい」「文脈をつなげにくい」といった認知的な側面が中心
- BPD
- 「見捨てられるのでは」「嫌われるのでは」といった対人不安が強い
- 感情の振れ幅が大きく、人間関係が短期間で不安定になりやすい
日常のたとえ話(会話の場面)
ASDの場合
話題の全体の流れをつかみにくく、「相手の一言」だけに反応してしまい、「どうしてそんなことを言うんだ」と感情的に反発することがあります。
実際には前後の文脈を踏まえると冗談だったり別の意図があったりするのですが、そこがつながらないために誤解が起きやすいのです。
BPDの場合
会話全体は理解できているものの、「この発言は自分を見捨てるサインだ」「距離を置かれているに違いない」といった感情に引っ張られやすくなります。
その結果、実際の意図よりも「感情に合う解釈」をしてしまい、人間関係で強い不安や衝突につながります。
ASD当事者の気づき
私は自閉スペクトラム症(ASD)の診断を受けていますが、過去に福祉関係者から「パーソナリティ障害ではないか?」と言われたことがあります。
心の動きが周囲からは読み取りにくく、時に誤解されやすいからかもしれません。
実際、以前に主治医へ「自分は境界性パーソナリティ障害なのでは?」と尋ねたこともありました。
その際には否定されましたが、確かに自分の行動だけを見ると、感情に振り回されているように見える瞬間があったと思います。
特に「癇癪」の場面では、自分でも後から反省することがありました。
ただ、最近になって気づいたのは、私が「感情に支配されている」のではなく、そもそも頭の中で処理できる「情報の数」が少なく、目の前の状況と全体を俯瞰して整理しきれないために混乱して爆発していた、ということです。
その理解が深まったことで、以前よりも感情的にならずに済む場面が増えてきました。
また、ASDの特性として「感情をぶつけられやすい」こともあると感じます。
たとえば、ある人から「いなくなったと思った(=見捨てられたと思った、という意味かもしれません)」と言われたとき、私はその言葉を文字通り受け取り、「いなくならないよ(私の予定にいなくなることは入っていませんの意)」と返しました。
しかし後から考えると、それは単なる言葉の意味ではなく、相手の不安や気持ちの表現だったのかもしれないと気づきました。
このように、ASDの人は「相手の言葉や感情の裏にある意図」に気づきにくい場合があるため、結果的に相手の感情に振り回されてしまうこともあるのだと思います。
正解が一つに決まらない会話では、論理的に考えすぎると逆に行き詰まってしまうこともあり、その点に注意が必要だと実感しています。
まとめ
- ASDとBPDは「感情の表れ方」や「対人関係の難しさ」に共通点があるが、背景は異なるとされている
- ASDは「情報処理の特徴」による誤解が生じやすく、BPDは「感情や対人関係の不安定さ」が中心にあるといわれている
- 当事者としては、感情的に見える行動も実際には「情報をまとめきれないこと」から生じている場合がある
- ASD当事者は相手の感情表現を文字通りに受け取りやすく、結果的に誤解や摩擦につながることがある
- 自分や周囲が「相手の意図や感じ方は必ずしも一つではない」と意識することが、関係をスムーズにするヒントになる
理解のポイントは、「幼少期からの本人の特性なのか」「感情の暴走なのか」という視点で整理すると分かりやすいようです。