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この記事でわかること
- それぞれの「仕事が続けにくさ」
- 見えにくい困難さの違い
- 実生活に役立つヒント
- 当事者としての気づき
※本記事は診断や治療を定めるものではありません。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
はじめに
この記事では、それぞれの「続けにくさ」の特徴を比較しながら解説し、ヒントを紹介していきます。
ASDの「仕事が続けにくさ」とは?
ASDの人が仕事を続けにくいと感じる背景には、特有の特性や感覚の傾向があります。
コミュニケーションの難しさ
職場での会話には「空気を読む」ことが求められる場面が多くあります。
上司が曖昧に指示したことをそのまま受け取り、周囲の期待とずれてしまう。
雑談に加われず孤立するなど、こうした経験が重なると、居心地の悪さやストレスにつながりやすいです。
ルーティンやこだわりが崩れる負担
ASDの人は、安定した手順やパターンで仕事を進めると力を発揮しやすい反面、予定外の変更が起きると混乱します。
たとえば「今日は新しい場所で」と言われると、慣れない刺激に多大なエネルギーを使い、体力を大きく消耗してしまいます。
感覚過敏や鈍麻による疲労
蛍光灯の光、急な電話の呼び出し音、同僚の雑談など、これらが強い刺激となって集中を妨げることがあります。
周囲は気にしないことでも、ASD当事者には大きなストレス源になり、仕事を続ける集中力を削いでしまいます。
ADHDの「仕事が続けにくさ」とは?
ADHDの人が抱えやすい困難は、内側から生じる注意や行動の特性です。
注意の持続が難しい
長時間の単調な作業では集中が切れやすく、やりかけのまま他のことに手を出してしまうことがあります。
結果として「最後までやり切れない人」という評価を受けることも少なくありません。
忘れ物や段取りのミス
提出期限を忘れる、机の上が散らかっておりスムーズに取り掛かれない、忘れ物をしてしまうことで取りに戻る時間が必要になる、などがあります。
こうした小さなミスが積み重なり、評価や信頼を損ねてしまうことがあります。
衝動性によるトラブル
思ったことをすぐ口に出す、興味のある作業に飛びついて他の仕事を忘れるなど、衝動的な行動が人間関係の摩擦や業務の停滞につながることもあります。
その場では本人も悪気がないことが多く、後から振り返って「なぜあんなことを言ったのだろう」と自己嫌悪に陥るケースも少なくありません。
ASDとADHDの比較:なぜ仕事が続けにくいのか?
両者の違いを整理すると、次のようになります。
ASDの続けにくさ
- 特性に合わない環境や人間関係のズレが負担になる
- 感覚過敏や予定外の変更で疲れやすい
- 「真面目に働いているのに周囲と噛み合わない」と感じやすい
「努力が正当に伝わらない」という感覚が積み重なり、仕事を続ける意欲や自信を削いでしまう要因になることがあります。
ADHDの続けにくさ
- 興味がないことへの集中が続かず、ミスが積み重なりやすい
- 目新しいことに気を取られやすく、モチベーションが下がりやすい
- 「やる気はあるのに続かない」と経験の積み重ねが不足し、周囲と比べて自己評価が下がりやすい
同じ「仕事が続かない」という結果でも、その過程や感じ方には大きな違いがあるのです。
仕事が続けにくさに対する工夫
ASDの場合の工夫
- 明確なマニュアルやルールを用意する
- マニュアルがあると仕事を進めやすいことを周りに相談する。
- 曖昧なルールが多い職場では「上位ルール=柔軟に運用するもの」「下位ルール=自分が守りやすいもの」と区別して考えると柔軟に対応できる可能性があります。
- 疲れを減らす工夫をする
- 刺激の多さはサングラス・イヤーマフなどのグッズで軽減可能で、使用しても差し支えないか相談する。
- 体力面では睡眠を優先し、15分程度の仮眠を取り入れるのも効果的であるが、仮眠を取りすぎると夜眠れなくなる可能性があります。
- 食事に関して、栄養バランスの良い食事も大切で、もしもの時に完全栄養食があると対応しやすい(たまに1食を置き換えるぐらいにとどめる方が吉)。
- 事前に予定変更を知らせてもらう
- 未確定の話でもよいので、変更情報を早めに伝えてもらえるように依頼する。
- 自分からも予定を共有しておくことで、不意の予定追加を防ぐ工夫になる。
ADHDの場合の工夫
- タスクを小さく区切る
- 「5分程度でできる作業」として始めれば、取り掛かりやすく集中も続きやすい。
- リマインダーやタイマーを活用する
- スマホやアプリで予定を管理する。紛失防止タグなどを活用して忘れ物を減らす。
- 刺激のある働き方を選ぶ
- 単調な作業を避け、変化を取り入れる。小休止の代わりにスクワットなどの軽い運動を挟むのも効果的。
障害だからとお願いするのではなく、仕事がスムーズになるからお願いする、というスタンスがおすすめです。
ASD当事者の気づき
私自身、ASDとして働くなかで「続けにくさ」を何度も実感してきました。
ある職場では「空気を読めないところを直した方がいいよ」と親身なアドバイスを受け、困惑したことがあります。
普通の人が発達障害について勉強する時間はないかもしれませんが、実際に話してみると理解してもらえることも多くありました。
その一方で、できることを「できない」と扱われることもあり、コミュニケーションの難しさを感じることもあります。
一方でADHDに関しては、「やる気はあるのに集中が続かず、気づけば違うことをしている」という話をよく聞きます。
薬物療法もありますが、それ以外では「ほめられる」「感謝される」といった環境がやる気を引き出すことを利用すると、やる気が出るかもしれません。
うまく伝わらない時、支援者や仲の良い同僚などの第三者に相談すると、スムーズに進むケースがあると実感しています。やる気が出ない場合には、お客様から直接感謝される仕事などはモチベーションを高めやすいかもしれません。
まとめ
- ASDとADHDの「仕事が続けにくさ」には、それぞれ異なる原因がある
- ASDは環境の変化や人間関係、感覚の負担が大きい
- ADHDは注意の持続や衝動性、行動のコントロールが難しい
- 同じ「続かない」でも背景の仕組みが異なるため、支援や工夫の方向性も変わる
- 自分の特性を理解することが、仕事を続けやすい工夫や環境づくりにつながる
自分の特性を整理することは、自己理解だけでなく周囲に説明する助けにもなります。理解が深まれば、少しずつでも働きやすい環境や工夫を見つけていけるのではないでしょうか。
おわりに
「就職したけれど長続きしない」「職場での人間関係や業務に疲れて辞めてしまう」、そうした悩みを持つ人は少なくありません。
特にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つ人にとって、仕事を続けることは大きな課題になりやすいといわれています。
ただし、同じ「仕事が続かない」という現象でも、その背景には異なる理由があります。ASDでは「環境や人間関係のズレ」、ADHDでは「集中力や行動のコントロールの難しさ」が中心になることが多いのです。
まずは自分がどのタイプの困難を抱えているのかを整理してみることが、次の一歩につながるのではないでしょうか。