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この記事でわかること
- ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)に共通する「注意・集中」の困難
- それぞれの特性に由来する違い
- 日常生活での工夫や周囲ができるヒント
- ASD当事者の気づき
※本記事は診断や治療を定めるものではありません。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
はじめに
「集中できない」という感覚は、多くの人が一度は経験したことがあると思います。
ですが、ASDやADHDをもつ人の集中のしづらさは、一般的な「気が散る」とは少し違うことがあります。
一見似ている「集中の問題」でも、その背景や仕組みには違いがあるため、本人の感じ方や対策も異なってきます。
この記事では、ASDとADHDの共通点と違いを整理してみます。
共通する注意と集中の問題
一度に複数の情報を処理するのが苦手
両方の特性に共通するのは、「複数の情報を同時に扱うのが難しい」という点です。
授業や会議で同時に板書を見ながら説明を聞くなど、マルチタスクが必要な場面で負担を感じやすくなります。
気が散りやすく、作業が途切れる
何かに取り組んでいても、周囲の音やちょっとした刺激で意識が外れてしまうことがあります。
その結果、やろうと思っていた作業が途中で途切れたり、別のことに注意が移ってしまうこともあります。
長時間の集中が続きにくい
「がんばって集中しよう」としても、時間が経つと疲れや不安で持続しにくいのも共通点です。
ASDにおける集中の問題
ASDの人にとっては、「環境の変化」や「予定外の出来事」が集中を乱す大きな要因になるといわれています。
- 予定していた流れが急に変わると、頭が切り替わらず混乱しやすい
- 普段は気にしないような人でも、音や光、周囲の動きが気になって作業が中断してしまう
- 興味のあることには強い集中力を発揮できるが、環境が少し変わるだけでその集中が途切れてしまう
環境の安定や予測可能性があると、安心して集中できることが多いようです。
ADHDにおける集中の問題
ADHDの人の場合、注意が散る主な理由は「内側から湧き上がる衝動」や「関心の移り変わり」といわれます。
- 自分の頭の中で次々と別のことを考え始め、今している作業を途中で投げ出してしまう
- 興味のあることには何時間も集中できる「過集中」状態になるが、興味が薄れるとすぐに注意が外れる
- 外部の刺激よりも、自分自身の思考や感情に引っ張られてしまいやすい
ASDが「外の変化に弱い」とすれば、ADHDは「内側の衝動に流されやすい」と表現できるかもしれません。
ASDの工夫:環境を整えることが第一歩
ASDの人にとって、予想外の刺激や環境の変化が集中を乱す大きな要因になります。
そのため、まずは「環境の安定」を意識することが有効です。
- 物理的なノイズ対策
- ノイズキャンセリングイヤホンや耳栓を使う
- 照明を調整して眩しさを減らす
- 視覚情報の整理
- 作業机の上は必要なものだけを置く
- 書類やデータはフォルダにまとめ、探すストレスを減らす
- 予定の見通しをつける
- カレンダーやアプリでスケジュールを「見える化」
- 予定が変わるときは事前に確認して安心感を持つ
環境を「できるだけ予定通り」に保つことが、集中の持続を助けてくれます。
ADHDの工夫:内側の衝動をコントロールする
ADHDの人は、外からの変化よりも「内側の衝動」や「興味の移り変わり」で集中が乱れやすいです。
そのため、意識的に行動を区切ったり、目標を細かく設定することが有効です。
- タスクを小分けにする
→ 「1時間で終わらせる」よりも「10分でここまで」と区切る
→ 達成感を積み重ねることでモチベーションを保ちやすい - 外部の仕組みに頼る
→ タイマーを使って作業と休憩をリズム化(ポモドーロ法など)
→ 付箋やアプリで「次にやること」を視覚化 - 過集中のリスクに気づく
→ 興味があることに没頭して他を忘れてしまう時は、アラームを設定
→ 体調や時間を意識的にチェックする
「気分」や「衝動」に流されやすい分、外部のツールやルールを味方につけることが大切です。
ASD当事者の気づき
私はASD当事者であり、同時にADHDの診断を受けています。
振り返ると、集中が続かない理由は単純にADHDのせいだけではなく、ストレスや不安、疲労、寝不足、栄養不足、スマートフォンの使いすぎなど、日常の中に集中を崩す要因がいくつも潜んでいると感じます。
ASDでは、他の人が気にしないような周囲のノイズや環境の変化が大きな妨げになることがあります。
反対にADHDでは、たとえ静かな環境でも、自分の中で衝動や興味が次々と湧いて注意が飛んでしまうことがあります。
つまり「外からの刺激に弱いASD」と「内側の衝動で流されやすいADHD」という違いが見えてきます。
私は、作業中に「机の上の余計なものは視界に入ると、それが視界の中で目立って注意が外れなくなり、片付けないと集中できない」と感じます(個人差あり)。
こうした体験を通じて、単に「不注意」と片づけられるものの裏には、それぞれの特性と日常的な環境要因が関係しているのだと気づきました。
まとめ
- ASDとADHDはどちらも「集中が途切れやすい」という共通点がある
- ASDは「外部の刺激や予定外の変化」で集中が崩れやすい
- ADHDは「内側の衝動や気分の移り変わり」で集中が続かないことが多い
- 集中力の低下は、睡眠不足・栄養不足・ストレスなど日常的な要因とも関わっている
- 工夫や環境調整が、集中のしやすさをサポートするカギになる
集中が途切れるとき、「外の刺激」と「内側の衝動」、どちらの影響をより強く感じるかで違うのかもしれません。