この記事でわかること
- 「感覚過敏」「感覚鈍麻」とはどういう状態か
- ASDに見られやすい「過敏と鈍麻の同居」というパターン
- 当事者が感じる「処理能力ベース」と「刺激ベース」の違い
- ASD当事者としての感覚特性の実感
この記事の結論としては、感覚過敏はASDだけのものではなく①ASDでは「処理能力の配分」によって過敏と鈍麻が同居しやすい②ASD以外では「刺激への反応」として過敏が目立ちやすいという整理ができると感じています。
はじめに
- 「音が大きすぎて苦しい」
- 「光がまぶしすぎて目を開けていられない」
このような感覚過敏の悩みを耳にすることは増えてきました。
一方で、「感覚過敏がある=ASD」と誤解されることも少なくありません。
実際には、ASDに限らず、うつ病や不安障害、トラウマ反応などでも感覚過敏は起こり得ます。
私がASD当事者として気になっているのは、
- 「ASDでは、感覚過敏と感覚鈍麻が入り混じったアンバランスさが目立つケースがある」
- 「その他のケースでは、感覚過敏だけが前面に出るケースが目立つように感じている」
という違いです。
この記事では、感覚過敏と感覚鈍麻の出方を整理しながら、
- ASDの感覚特性を「脳の処理能力」の観点からどう説明できるか
- ASD以外の感覚過敏を「外部刺激への反応」としてどう整理できるか
という点を、当事者視点の仮説としてまとめます。
※当事者視点の整理です。診断や治療を代替できません。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
感覚過敏とは?
感覚過敏とは、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の刺激に対して、一般的な水準よりも強く反応してしまう状態を指します。
例としては、次のようなものがあります。
- 聴覚:人混みや食器の音が不快に感じられる
- 視覚:蛍光灯がちらついたりまぶしいなど
- 触覚:服のタグやセーターのチクチクが我慢できない
- 嗅覚:洗剤や香水の匂いで気分が悪くなる
- 味覚:特定の食べ物の味や舌触りが強すぎて食べられない
感覚過敏そのものは病名ではなく「状態」であり、誰にでも一定程度は起こり得るとされています。
感覚鈍麻とは?
感覚鈍麻は、逆に刺激に気づきにくい、あるいは反応が弱い状態を指します。
ASDの診断基準でも「過敏/鈍麻、または異常な関心」が並べて記載されています。
例としては、次のようなものです。
- 痛み:転んでも出血しても気づかない、反応が薄い
- 温度:暑さや寒さに鈍感で、体調を崩してからようやく気づく
- 満腹感:お腹いっぱいなのに食べ続けてしまい、後から苦しくなる
- 音:大きな物音には無反応だが、小さな特定の音には極端に反応する
ここまでの話は、どの人にも起こり得る「状態」としての説明です。
次の章から、ASDとその他のケースで「背景にあるしくみの違い」をどう整理するかを考えます。
ASDに多い「過敏と鈍麻の同居」と処理能力の関係
ASDの人の感覚特性は、全体として「アンバランス」に感じられる場合があります。
- ある感覚には極端に過敏
- 別の感覚には鈍麻
このような「混在」が、ASDでよく報告されている特徴の一つです。
幼少期から似た傾向が続き、生活全般に影響する人もいます。
私は当事者として、このアンバランスさの背景に「情報処理能力の使い方」が関わっているのではないかと感じています。
ここでいう処理能力とは、
- どれだけの感覚情報を同時に扱えるか
- どの刺激にどれくらい注意を割り振るか
- 刺激をどのタイミングで切り替えるか
といった「脳のリソース配分」のイメージです。
私の仮説を簡単に書くと、次のようになります。
- 処理できる情報量に限りがある
- 一部の感覚に処理能力を集中させる
- その結果、集中した感覚では「過敏」が目立ち、その他の感覚では「鈍麻」が目立つ
つまり、ASDの感覚過敏と鈍麻は、単に「感覚器官が良すぎる・悪すぎる」というよりは、
- 「限られた処理能力をどこに割り振っているか」
- 「その配分が極端で、全体のバランスが崩れやすい」
という形で説明した方が、自分としてはしっくりきます。
この部分は、あくまで当事者としての整理であり、研究的に決着がついているわけではありません。
ただし、ASDの情報処理の偏りを指摘する仮説(弱い中枢性統合など)とは、大きく矛盾しない感覚があります。
ASD以外で見られる感覚過敏|外部刺激への反応としての過敏
一方で、発達障害の診断がなくても感覚過敏は見られます。
- うつ病や不安障害
- トラウマ反応(PTSDなど)
- 強いストレスや睡眠不足が続いている状態
- 体調不良時の一時的な過敏
これらの場合、私が見聞きしている範囲では、次のようなパターンが目立ちます。
- 主に「感覚過敏」が前面に出る
- 「感覚鈍麻」がはっきりとは目立たないことも多い
- 症状や環境の変化に伴って、過敏さが変動しやすい
ここでは、ASDのような「処理能力の配分のクセ」というよりも、
- 「外部刺激そのものへの反応が強くなっている」
- 「脳全体の緊張やストレスで、刺激の信号が増幅されている」
といったイメージで説明されることが多いように感じます。
私なりに整理すると、
- ASDに多いのは「処理能力の配分が偏っているために、ある感覚が過敏・別の感覚が鈍麻になる」タイプ
- その他のケースでは「脳や身体の状態によって、特定の刺激への反応そのものが強くなっている」タイプ
という違いがあるのではないか、と考えています。
これは厳密な医学的分類ではなく、「当事者として理解しやすくするための整理の仕方」です。
比較|処理能力ベースと刺激ベースで見た感覚特性
※ここでの「処理能力ベース」「刺激ベース」という言葉は、私が理解しやすくするためにつけた呼び方であり、公式な診断用語ではありません。
以下は、上で書いた内容を整理した「イメージ上の比較」です。
診断基準ではなく、違いをざっくり捉えるための目安として読んでください。
| 項目 | ASDに多いと感じるパターン(処理能力ベース) | その他の感覚過敏に多いと感じるパターン(刺激ベース) |
|---|---|---|
| 出方 | 過敏と鈍麻が混在し、感覚ごとのアンバランスが目立つ | 主に過敏が前面に出て、鈍麻はあまり目立たないことが多い |
| 背景のイメージ | 処理できる情報量や配分のクセによって、どの感覚にリソースを割くかが偏る | ストレスや症状によって、特定の刺激への反応そのものが増幅されている |
| 経過 | 幼少期から似た傾向が続くケースがあり、環境が変わっても基本パターンが残る人もいる | 体調やストレス状態と連動して変動し、よくなったり悪くなったりしやすい |
| 生活への影響 | 過敏と鈍麻の両方が日常のあらゆる場面で行動に影響しやすい | 特定の場面や時期に強く不快だが、ある程度はコントロールできる場合もある |
| 典型例のイメージ | 音には過敏だが、痛みには鈍感でケガに気づかない | 光や音には敏感だが、痛みの感じ方は大きくは変わらない |
ASD当事者の気づき
私は仕事中に、大切な書類がいつの間にか血まみれになっていたことがありました。
自分ではケガをしたことに気づかず、あとになって初めて出血していたと分かったのです。
このときは、視覚や作業への集中に処理能力を振り切っていて、痛みの情報をほとんど拾えていなかった感覚があります。
また、体の内側の感覚(臓器感覚)についても、私は鈍感さを感じることがあります。
お腹の状態や疲労のサインを後からまとめて自覚するようなことがあり、
「外からの刺激には過敏なのに、自分の身体の状態には鈍い」
というアンバランスさを日常的に感じています。
こうした経験から、私は「ASDでは、処理能力の配分の偏りによって、過敏と鈍麻が同時に起こりやすい」という仮説で自分の感覚を理解しています。
まとめ
- 感覚過敏はASDだけのものではなく、気分障害や不安、強いストレスなどでも起こり得る
- ASDでは、過敏と鈍麻が同時に出て「感覚のアンバランス」として続く人がいる
- このアンバランスは、当事者としては「処理能力の配分が偏っている」と考えると理解しやすい
- 一方で、ASD以外の感覚過敏では「外部刺激への反応そのものが強まっている」イメージが近い場合もある
- 診断の決め手にはならないが、自分の感覚の背景を整理する「補助線」としては役に立つ
必ずしも全員に当てはまる話ではありませんが、「過敏と鈍麻の同居」「処理能力と刺激のどちらで説明すると納得しやすいか」という視点を持つことが手がかりになるかもしれません。
困ったときの相談先(公的機関)
- 「各自治体の発達相談窓口」→「※お住まいの自治体の公式サイトをご確認ください」
- お住まいの福祉相談窓口では、発達特性に関する相談や支援の案内が受けられる場合があります。
- 「発達障害者支援センター」→「https://www.rehab.go.jp/ddis/」
- 特性に基づく相談ができ、生活・家族・就労など幅広い支援に対応しています。
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