この記事の結論
自閉スペクトラム症(ASD)のコミュニケーションの難しさについて、「二重の共感問題(Double Empathy Problem)」として捉えることにより、違った考え方を持つことができるかもしれない、といった視点を整理した記事です。
はじめに
ASDをめぐるコミュニケーションについては、意図がうまく伝わらなかったり、会話が噛み合いにくい場面が起きることがあります。
こうした出来事は、ときに「理解力が足りない」「共感できない」といった「能力の話」に置き換えられることがあるかもしれません。
ですが、当事者視点から見ると、そこまで単純ではない感覚もあります。
この記事では、二重の共感問題(Double Empathy Problem)について、当事者視点から整理します。
お互いにズレがあるといった視点は、自分はどこまで工夫するかの整理をしやすくなると思います。
二重の共感問題とは
二重の共感問題(Double Empathy Problem)は、自閉症研究者(ASD当事者)のダミアン・ミルトン(2012)が提唱した概念です。
ASD当事者と非当事者のあいだに生じる、「相互理解のズレ」に注目した考え方です。
ざっくり言うと、「相互理解が噛み合いにくい」という現象を扱います。
二重の共感問題で語られていることは、実はお互いが気持ちを理解する前提が共有されていないのではないか、といった考え方です。
「空気が読めない」を言い換えると
「空気が読めない」という表現は、「できる」「できない」といったニュアンスを含みやすくなります。
二重の共感問題の視点で言い換えると、お互いに「共有されていると思われている前提が、実際には共有されていない」という状態です。
たとえば、
- 「この場は雑談だから結論は急がない」
- 「これは冗談なので深刻に返さない」
など、暗黙のルールが一致していないと、会話は簡単にすれ違います。
※ここで言う「前提」は一例で、二重の共感問題はコミュニケーション様式や経験の差による相互の噛み合わなさ全体を指す整理としても扱われます。
この捉え方の良いところは、お互いが「どこが噛み合っていないか」と整理できる点だと思います。
見え方が変わることで整理できる
二重の共感問題は、「ズレ」として捉えることで何かを解決できるようになる、という話ではありません。
変わるのは行動というより、工夫をするときの捉え方です。
コミュニケーションの苦手さは「特性」として片付けていたことも、「前提が共有されていない結果」だったかを観察することができます。
ただし、こうした見え方ができても、「特性」を変えることはできません。
しかし、「前提が共有されていない結果」を観察することで、今まで「特性」だと思っていたことが違った、といった気づきがあるかもしれません。
これはあくまで客観的に捉えるための整理であり、それで答えが出るわけではない、といった前提は大事だと思います。
まとめ
二重の共感問題は、すれ違いを「特性」ではなく「お互いのズレ」として捉え直す考え方です。
この視点は、何かを解決するためではなく、見え方を変えるための整理として使えるかもしれません。
※当事者視点の整理ブログです。専門的判断は医師や専門家にご相談ください。
