この記事の結論
「自閉症的バーンアウト」は、外から見ると前触れなく動けなくなったように見えても、無意識の補償が積み重なった結果として説明できる場合がある、という整理です。
はじめに
自閉スペクトラム症(ASD)当事者の中には、ある時期を境に以前のように動けなくなる経験をする人がいます。
やることは分かっているはずなのに、手が止まる、考えがまとまらない、刺激が重い。
この状態は、外から見ても、本人の中でも説明が難しい場合があります。
ここでは「自閉症的バーンアウト(Autistic Burnout)」という言葉で語られることがある現象について、何が起きているのかを整理します。
自閉症的バーンアウトとは何を指す言葉か
「バーンアウト(燃え尽き)」という言葉自体は広く使われています。
しかし、ASDで語られる「自閉症的バーンアウト」は、当事者の説明として、
- 日常の処理が維持できなくなる
- 以前はできていたことが続かなくなる
という形で表現されることがあります。
特に燃え尽きるようなことをしている自覚がないのに、なぜか燃え尽きてしまうケースです。
なお、「自閉症的バーンアウト」は医学的に統一された用語というより、当事者の経験を説明するために使われる用語として扱っています。
自閉症的バーンアウト時に観測されやすいこと
バーンアウトの局面では、次のような変化として語られます。
- 恒常的なペースの維持が難しくなる
- 身支度、料理、片づけなど、これまでできていたことが遅くなったり続かなくなる
- 会話が重くなる
- 言葉が出にくい、相手の言葉が頭に入るまでに時間がかかる、言葉の意味理解が進まない
- 刺激への耐性が下がる
- 音・光・匂い・肌触りなどがいつもより強く感じられる
これらはいずれも、「新しい問題が増えた」というより、生活を続けていく力が落ちた結果として現れやすい変化です。
背景にある「補償」
社会的な場面では、意図・暗黙の前提などを扱いながら会話や行動が行われます。
こういった場面は、多くのASD当事者にとって自然に行うことが苦手な場合があります。
しかし、苦手ではあるものの、「補償(対策)」を行うことである程度は対応できることがあります。
この「補償」は、自然に行っている動作ではないため、無意識のうちに負担となっている場合があります。
そのため、コミュニケーションを成立させるために、
- 反応を細かく確認する
- 意味を分解して考える
- 状況に合わせて組み立て直す
といった「補償」が増えます。
この「補償」が、疲労の説明で重要なポイントになります。
「過剰適応」というプロセス
この記事では、「補償」が一時的な工夫にとどまらず、日常のベースとして常態化している状態を「過剰適応」と呼びます。
「過剰適応」では、たとえば、
- 場を乱さないように調整する
- 破綻しないように先回りする
- その場の正解を推測して合わせる
といったパターンについて、無意識の負担が存在している可能性を考えることができます。
結果自体(成立している会話、成立している仕事)は間違っていないので、内側の負担を見落とすことがあります。
まとめ
「自閉症的バーンアウト」は、
- 日ごろの対策が日常のベースとして負担になっていた結果
- 「破綻」ではなく「維持不能」
- ある時点で維持できなくなる局面
として整理できます。
突然バーンアウトしたというより、見えない疲労が表面化したと考える方が、現象を説明しやすくなります。
※当事者視点の整理ブログです。専門的判断は医師や専門家にご相談ください。

