「当事者の体験」こだわり・常同行動

ASD当事者が語る|新しい環境といつもの選択の安心感

「当事者の体験」
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新しさよりも、慣れ親しんだ安心感を選んでしまう理由

気づけば「いつもの場所」「いつもの商品」

ファーストフード店の新商品が魅力的に見えても、気づけばいつものスーパーで同じパンを手に取っている——。

ASD(自閉スペクトラム症)当事者である私にとって、これは日常的な光景です。

特別な強いこだわりがあるわけではありません。

むしろ、新しいものへの興味は確かに湧いています。

しかし、よほど強い動機がない限り、その意図は忘却の彼方へと消え、結果として「いつもの選択」に落ち着いてしまうのです。

新しい環境での「見知ったもの」の安心感

新しい環境に適応する際、そこに見知ったものが一つでもあると、適応のしやすさが段違いに変わります。

せっかく遠出をしても、見慣れたファーストフード店を見つけると、購入パターンまで同一のものを選択してしまう傾向があるのです。

もちろん、誰にとっても新しい環境は負荷がかかるものでしょう。

しかしASD当事者の視点では、新しい場所では「ありとあらゆる抜け」が発生するように感じます。

注意のリソースが環境適応に消費され、新しい物を探索する余裕まで残らないのかもしれません。

「複数の新規性」への対処の難しさ

興味深いのは、いつもの環境であれば新しいものを探索することはよくある、という点です。

つまり、問題は「新しさ」そのものではなく、複数の新規性に同時に触れることにあるようです。

  • 新しい環境 + いつもの選択 → 比較的対応しやすい
  • いつもの環境 + 新しい選択 → 問題なく探索できる
  • 新しい環境 + 新しい選択 → 負荷が高く、いつもの選択に回帰しやすい

「普通」との違い

多くの人にとっては、新しい場所に行ったら新しいものを試すことが傾向として自然な流れなのかもしれません。

しかしASD当事者にとっては、環境の変化だけで既に認知的負荷が高まっており、そこに選択肢の探索まで加わると、キャパシティを超えてしまうのです。

これは柔軟性の欠如というよりも、認知リソースの配分の違いと捉えた方が実態に近いかもしれません。

新しい環境では、多くの人が自動的に処理できることにも意識的な注意が必要となり、結果として他のことに割く余裕が減少するのです。

おわりに

「いつもの選択」への回帰は、怠惰でも頑固さでもありません。

それは、限られた認知リソースを効率的に配分しようとする、一つの適応戦略なのかもしれません。

新しい環境という挑戦だけで十分な負荷がある中、せめて選択の部分では安心できるパターンを選ぶ——それは、自分なりのバランスの取り方なのだと思います。

新しい環境に挑むとき、「すべてを変える必要はない」という視点を持つだけで、少し楽になるかもしれません。



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