「ASD理解」易刺激性

自閉スペクトラム症(ASD)の易刺激性を「コップと水」で考える|溢れる前に気づく工夫

ASDの易刺激性を「コップと水」の比喩で示した図。コップに溜まったストレスを水に見立て、「水を減らす」ことで負担を軽減するイメージを表したイラスト。 「ASD理解」
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この記事でわかること

  • 易刺激性を「コップと水」で理解する考え方
  • ASD当事者に起きやすい反応の理由
  • 「コップを大きくする」より「水を減らす」工夫が有効な理由
  • 日常でできるストレス軽減と排出の方法
  • 溢れる前に気づくためのサインの見つけ方

この記事の結論としては、

コップの大きさそのものを変えようとするよりも、水の量を減らす工夫に目を向けることで、生活が安定しやすくなるという、当事者としての体験にもとづく理解の整理になります。


はじめに

ASD(自閉スペクトラム症)には、易刺激性と呼ばれる特性があります。

些細な音や光、人とのやり取りの変化などに強く反応してしまい、自分でも驚くほど気持ちが揺さぶられることがあります。

この記事では、私自身が理解しやすかった「コップと水」の比喩を使って、易刺激性の仕組みと、日常でできる対処を整理します。

※当事者視点の整理です。診断や治療を代替できません。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。


「コップ」と「水」のたとえ

人それぞれ、ストレスや刺激をためる「コップ」があると考えてみます。

そのコップの中に、日々の刺激や疲れが「水」として少しずつ溜まっていくイメージです。

たとえば、次のようなものが水にあたります。

  • 音や光などの感覚刺激
  • 人とのやり取りや会話の負荷
  • 予定外の出来事や段取りの乱れ
  • 睡眠不足や体調不良

私の場合は、ASDの特性として、このコップの容量があまり大きくない感覚があります。

少しの刺激でも水位がすぐに上がり、あっという間に満杯に近づいてしまうことがよくあります。

コップから水があふれると、次のような形で現れやすくなります。

  • 急にイライラする
  • パニックに近い状態になる
  • 涙が止まらなくなる

外から見ると、「突然怒った」「急に取り乱した」ように見えているかもしれません。

内側ではコップの水が限界まで溜まっていた、という理解のほうが近いと感じています。


「コップを大きくする」より「水を減らす」考え方

以前の私は、易刺激性への対処として、

  • 「もっと我慢できるようになる」
  • 「そのうち慣れるはず」

と考えがちでした。

いわば、コップを大きくしようとする方向の努力です。

しかし、実際にはうまくいきませんでした。

我慢を重ねているあいだに水が静かに溜まり続け、限界を超えたところで一気にあふれてしまうことが多かったからです。

ある時、次のような考え方に出会いました。

  • コップの大きさは、急に変えることが難しい
  • けれども、水を減らす工夫なら、今からでもできる

この視点を取り入れてから、少し気持ちが楽になりました。

我慢そのものを増やすのではなく、そもそもコップの中に入る水を減らしたり、こまめに排水したりすることに意識を向けるようにしました。


「水を減らす」ために日常でできること

ここでは、私が実際に試してみて、ある程度効果を感じている工夫を整理します。

どれも「水をゼロにする」というより「水位をなるべく低めに保つ」イメージに近いものです。

日常のストレスや疲労を減らす工夫

まず、コップに入ってくる水の量そのものを減らします。

  • 音が気になる場所では、イヤーマフや耳栓を使う
  • まぶしさが負担になるときは、サングラスや帽子を活用する
  • 予定を詰め込みすぎず、空白の時間をあらかじめ入れておく
  • 一人で落ち着ける時間と場所を確保しておく
  • 睡眠時間と休息を、他の予定より優先度高めに扱う

これらはどれも派手な対策ではありませんが、積み重ねることで、水位の上がり方がゆるやかになっていきました。

ストレスを外に出す・処理する工夫

次に、ある程度溜まってしまった水を外に流すイメージの工夫です。

  • 深呼吸や、体の力を抜く簡単なリラクゼーションを覚えておく
  • 日記やメモアプリに、その日の負担や出来事を書き出す
  • 信頼できる人に、事実ベースで状況を共有する
  • 困ったときの行動パターンを、あらかじめ決めておく

困ったときの行動パターンの例としては、次のようなものがあります。

  • いったん席を離れて、静かな場所に移動する
  • その場で返事をせず、「少し時間をください」といったことを伝える
  • 一人になれる場所で、数分だけ目を閉じて呼吸を整える

こういった行動を「いざというときの手順」として用意しておくと、水があふれる前に排出口を開けやすくなりました。


「溢れる前に気づく」ためのサインを見つける

水を減らす工夫と同じくらい重要だと感じているのが、「そろそろ限界が近い」というサインに早めに気づくことです。

私の場合、コップの水位が高くなってきたときに出やすいサインは次のようなものです。

  • 頭が重く感じる、違和感がある
  • 自分の話す声が小さくなる、または話したくなくなる
  • いつもより音や光が気になり、刺激に敏感になる
  • 呼吸が浅くなり、胸のあたりがそわそわする

こうしたサインに気づいたときは、

  • その場から少し離れて休む
  • 急ぎでない予定を一つ減らす
  • 短時間でも静かな場所に移動する

など、早めに水を抜く行動を取るようにしています。

結果として、パニックや爆発的な反応になる前に軌道修正できる場面が、少しずつ増えてきました。


周囲の理解に役立つ「コップと水」のイメージ

「コップと水」の比喩は、自分自身が理解しやすいだけでなく、周囲の人に説明するときにも役立ちます。

たとえば、次のような共有がしやすくなります。

  • 「怒っている」というより「コップの水が限界に近い」状態であること
  • 我慢が足りないのではなく、もともとのコップの大きさが違うこと
  • 少し刺激を減らしてもらえるだけで、水位を下げやすくなること

周囲の人がこのイメージを持ってくれると、次のような関わり方が生まれやすくなります。

  • 刺激になりやすい環境を、可能な範囲で調整してもらえるかもしれない
  • 限界が近そうなときに、いったん距離を取る選択を尊重してもらえるかもしれない
  • 落ち着いたあとに、一緒に振り返って改善点を考えられるかもしれない

こうしたサポートがあると、ASD当事者が安心して過ごせる場面は確実に増えると感じています。


まとめ

  • 易刺激性は、コップの水の量に目を向けると理解しやすい
  • 水を減らす工夫は、環境調整や休息の優先など、日常生活の中で少しずつ実践できる
  • 限界前に休むことで、パニックや爆発的な反応を減らしやすくなる
  • 「コップと水」のイメージは、関わり方のヒントになるかもしれない

水を減らす視点を取り入れることで、私自身は「我慢し続ける」という発想から少し距離を取ることができました。

同じような感覚を持つ方にとっても、負担を整理する一つの手がかりになればと考えています。