この記事でわかること
- 「ASDは単純作業が向いている」と言われる、特性の観点からの理由
- それでも「合わない」と感じる、環境要因の観点からの理由
- 誤解されやすい行動とコミュニケーションの観点からの具体例
- 職場環境によって負担が変わる、文化の観点からの理由
- ASD当事者の体験から見た「続けやすさ」の条件
- 単純作業が向いていないと感じたときに、どこを見直すと良いかのヒント
この記事の結論としては、
単純作業の向き・不向きは「作業内容」よりも、①職場の文化、②業務以外の時間の過ごし方、③誤解が生まれやすい環境かどうか、④変化や刺激の有無、の条件で大きく変わる、という整理になります。
はじめに
単純作業は本当にASDと相性がいいのか?
「発達障害のある人は単純作業が向いている」という話を聞いたことがある方は多いと思います。
一方で「単純作業の職場で人間関係がうまくいかず辞めた」という声も、よく見かけます。
私自身、ASD当事者として、単純作業について「作業そのものは好き」と「職場では続けにくい」の両方を感じてきました。
同じ「単純作業」でも、環境や条件によって、まったく違う感覚になることがあるんです。
そこでこの記事では、
- 「単純作業がASDと相性がいいのか」について、
- なぜ向いているといわれるのか、それでも続かないことがあるのか
を整理してみたいと思います。
ネット上には
- 「ASDは単純作業が向いている」
- 「単純作業で続かなかった」
という情報が混在していますが、なぜそうなるのかを構造的に整理した記事は少ないと感じています。
この記事では、作業内容・職場文化・環境要因・時間軸の視点から分解して考えていきます。
※当事者視点の整理です。必要に応じて医師や専門家にご相談ください。
この記事で扱う「単純作業」について
この記事でいう「単純作業」は、主に次のような仕事をイメージしています。
工場での製造ラインや検品、配送センターでの仕分け、清掃、データ入力などです。
一方で、専門技術を要する作業や、接客がメインの仕事など、人との関わりが中心となる業務は、この記事の範囲からは外しています。
※あくまで私が体験した範囲での整理です。
当事者から見た「向いている」と「向いていない」
現実には「単純作業が得意」と「単純作業で続かない」の両方が確かに存在します。
この違いは、どこから生まれるのでしょうか。
「向いている」パターンが生じる理由
繰り返しに強い
同じ作業を繰り返すことを苦痛に感じにくい人も中にはいると言われています。
私自身も、同じ手順で進められる作業は集中してこなすことができ、むしろ安心感がありました。
細かい違いに気づきやすい
検品や仕分けなど、細部に注意を向ける作業では、小さな違いに気づきやすい特性がある場合は、強みになることがあります。
私の場合、不良品を見つける作業では、周囲から「よく気づくね」と言われることがありました。
ただし、私の体験では、注意を向けすぎて疲れやすい側面もあります。
ルール通りに進められる
作業マニュアルがあると、何をすればいいかが明確で、迷わずに進められます。
マニュアル通りに進めることで、「これで合っているか」という不安が減り、作業に集中できるんです。
「向いていない」パターンが生じる理由
一方で、苦手に感じやすいと私が考えた要因もあります。
仕事のスタイルがマイナスに働くケース
仕事のスタイルである繰り返し作業が、マイナスに働く場面もあるのではと私が感じた傾向を整理します。
- 作業が単調で変化が乏しいため、他人のことが気になりやすい傾向があるのではと私は感じた
- 業務以外の時間(休憩・昼食)では、雑談が噂話になりやすい傾向があるのではと私は感じた
私が経験した一部の職場では、「刺激が少ない」こと自体が人間関係への関心を高め、結果として誤解やトラブルにつながっている可能性があるのではと感じた記憶があります。
誤解されやすい行動が目立ちやすい
単純作業の職場では、ちょっとした行動が誤解され、人間関係のトラブルにつながることがあると思っています。
たとえば、
- 挨拶のタイミングがずれると「無視された」と受け取られたり、
- 誰とでも同じ態度で接しているのに「特定の人と仲がいい」
と勘違いされた経験が私にはあります。
会話に入るタイミングが遅れて「空気が読めない」と見られることもありました。
業務以外の時間での過ごし方が負担になる
作業中は問題なくても、休憩時間や昼食時に雑談に入れず、孤立感を感じることがあります。
私の場合、業務中以外の時間をどう過ごすかが、単純作業の職場で続けられるかを左右する大きな要因であると考えています。
なぜ「単純作業の職場」が特に厳しいのか
私の経験上、単純作業で苦労しやすいのは、特に業務以外の時間での人間関係です。
私が働いていたとき、負担が大きかったのは主に休憩時間や昼食時でした。
この時間は、作業・成果・技術など、業務に関係ない雑談が中心になるタイミングです。
具体的には、
- 誰が誰と仲がいいか
- 誰の行動が変だったか
- プライベートの話題
- 他の人の噂話
といったことが話題の中心になります。
そのため、ASDの中でも雑談が苦手な人ほど「ここが一番きつい」状態になりやすいと私は考えています。
慣れると変化が起きる
私が慣れて変化が起きたと感じたタイミングは、
- 人間関係が安定し、
- 意識的に考えなくても動けるようになり、
- 同僚との距離感も固定された
と感じた時期です。
つまり、最初は不安定だった職場での立ち位置が、慣れることで「ある程度予測できる状態」になるというプロセスがあるのだと思います。
たとえば、
- 最初は「この人とどう接すればいいか」と一つひとつ考えていたことが、
- 半年後には「この人はこういうタイプだから、こう接する」
ようになります。
私の場合は、ある程度の期間がないと、職場との相性を判断しにくいと感じています。
この「慣れるまでの期間」をどう乗り越えるかが、単純作業の適性を左右する大きなポイントだと私は考えています。
同じ「単純作業」でも負担が全く違う理由
単純作業について、自分の経験や情報を見ていく中で気づいたのは、同じ「単純作業」でも、職場の文化によって負担が全く違うということです。
これは作業内容というより、「業務以外の時間の過ごし方」が関係していると私は推測しました。
負担が大きくなりやすいと私が考えた職場
たとえば、
- 休憩時間で雑談が中心になりやすい
- 同僚同士の距離が近く、プライベートの話題が多い
- 業務中も会話が多く、集中を妨げられる
- 噂話や人間関係の話題が娯楽化している傾向がある
- なぜか暗黙のルールだけが残っていて、理由や背景が共有されていない
これらが重なると、「単純作業」なのに負荷が高くなるのではないかと考えています。
負担が軽くなりやすいと私が考えた職場
一方で、
- 休憩時間が短く、業務に集中できる
- 同僚との距離が適度で、過度なプライベートの話題が少ない
- 業務中の会話が最小限で、集中しやすい
- 成果や技術が評価され、人間関係が主役にならない
- ルールが明文化されていて、暗黙のルールが少ない
こういう職場だと、慣れてしまえば人間関係の負荷が気にならない状態になります。
たとえば、業務中は集中し、休憩時間はゆったり、あとは自分のペースで進められます。
つまり、「単純作業が得意か苦手か」は、作業そのものより、環境要因で決まる部分が大きいのだと私は思っています。
単純作業を4つの軸で整理
私の体験からの仮説ですが、得意・苦手の差は、次の4つの軸でかなり説明できると感じています。
この整理は、4軸で「構造」を、慣れるまでの期間で「時間」を、それぞれ分けて考えています。
※これは私の「そう感じた整理」を表にしたものであり、研究で確立された分類ではありません。
| 軸 | 得意になりやすい要因 | 苦手になりやすい要因 |
|---|---|---|
| 作業内容 | 繰り返し・ルール・細部への注意 | 変化が多い・臨機応変な対応 |
| 職場文化 | 業務中心・成果評価・技術重視 | 人間関係中心・雑談が娯楽化 |
| 業務以外の時間 | 休憩が短い・プライベートの話題が少ない | 休憩が長い・雑談が中心 |
| 誤解の生まれやすさ | ルールが明文化・暗黙のルールが少ない | 暗黙のルールが多い・行動が誤解されやすい |
自分がうまくいかなかった単純作業を思い出して、
- 作業内容
- 職場文化
- 業務以外の時間
- 誤解の生まれやすさ
のどこで負担を感じていたのかを振り返ってみると、整理がしやすくなるかもしれません。
「全部がダメ」ではなく、「特にここがきつかった」という視点で考えると、次の職場選びのヒントになるかもしれません。
作業内容の軸
作業内容そのものは、私にとって得意な部分が多かったです。
同じ手順で進められる作業や、細かい違いに気づく作業は、集中してこなすことができました。
一方で、急な変化や臨機応変な対応が求められる場面では、負担を感じることがありました。
職場文化の軸
職場の文化が「業務中心」か「人間関係中心」かで、働きやすさが大きく変わりました。
技術や知識を扱う職場では、話題は業務内容やスキルに向かうため、人間関係の詮索は少なかったと記憶しています。
業務以外の時間の軸
休憩時間の長さや、昼食時の過ごし方が、私にとって大きな負担になりました。
休憩時間が一人で過ごしづらい職場は相性が悪かったと記憶しています。
誤解の生まれやすさの軸
何気ない、私のぎこちない行動が誤解されたことがあり、トラブルにつながることもありました。
たとえば、
- 自然と挨拶するタイミングや、
- スムーズに会話に入るタイミング
など、タイミングがつかみにくいことが苦手でした。
一方で、わかりやすいタイミングが多い場合は、誤解が生まれにくかったです。
私の体験から感じたこと
私は単純作業そのものは好きで、長く続けたいと思った時期がありました。
実際、当時の上司にも能力を認めてもらい、仕事の成果が評価されたときは「自分に合っている」と感じていました。
業務がシンプルで集中できることは、大きな安心感につながっていたのです。
しかし一方で、業務中以外の休憩や雑談の場面ではうまく立ち回れず、周囲の関係性に馴染めませんでした。
作業には自信があっても、職場の文化に適応できずに続けられなくなったのです。
その後別の職場では、特性によって「コミュニケーションの苦手なパターン」を極力減らしたところ、長く安定して働けるようになりました。
この記事では触れませんが、「コミュニケーションが苦手」と「苦手なコミュニケーションパターンがある」は似ていても違っていると思いました。
単純作業が合わないと感じたとき
見直したいポイント
もし単純作業で続けにくさを感じているなら、次のポイントを振り返ってみると良いかもしれません。
- 作業内容が合わないのか、環境が合わないのかを分けて考える
- 業務以外の時間の過ごし方が負担になっていないか
- 慣れるまでの期間を想定できているか
これらを整理すると、「単純作業そのものが合わない」のか「この職場の環境が合わない」のかが見えてくることがあります。
まとめ
単純作業は「分解」して考える
- 4軸(作業内容・職場文化・業務以外の時間・誤解の生まれやすさ)で私は分解した
- 職場の文化や環境要因が適性を大きく左右することがある
- 慣れるまでの期間を過ぎると変わることがある
- 「単純作業」というラベルだけで判断せず、環境を分解して考えることが大切
「ASDは単純作業が向いている」という情報と「単純作業で続かなかった」という体験談が混在していますが、どちらも間違いではないと私は思っています。
作業内容が合っていても、職場の文化が合わない方が続けにくい、と私は考えています。
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