「当事者の体験」実行機能・不注意・衝動性

ASD当事者が語る|新しい環境で手順が飛ぶ・ミスが増える理由

「当事者の体験」
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はじめに

ASD(自閉スペクトラム症)当事者の経験にもとづき、要点を押さえやすい時と押さえにくい時の違いを整理します。

私の場合、「型(ひな型)」があるかどうか、そして慣れない体験がどの程度重なるかで、理解や集中のしやすさが大きく変わると感じています。


第1章 要点を押さえやすい時=「型」がある時

頭の中に「型」があると、パターンが見える

要点がすぐつかめる時、頭の中の型(ひな型)に新しい情報をはめるだけでパターンが立ち上がります。たとえば、

  • 何度も経験した流れで、重要点の位置が読めている
  • 手順が固定されていて、「ここが肝」という位置が明確
  • 繰り返した作業で、どこに注意すべきかがわかっている

このような場面では、点を拾った瞬間にパターンがまとまります。

私の感覚では、「知っているパターンかどうか」で速さが大きく変わります。

同じ作業を繰り返すと、慣れるのが早い

最初は戸惑っていても、手順が固まると一気に安定します。

人によっては「要領がいい」と言われることもありました。

これは「型」が頭の中にできたことで、迷いが減り、要点に集中しやすくなるためです。


第2章 要点を押さえにくい時=慣れない体験が重なる時

新しい場所で新しい作業をする時

要点をつかみにくくなる典型的な状況は、慣れない体験が同時に押し寄せる時です。

新しい場所でほぼやったことがない作業をする場面がそれに当たります。

集中が安定せず、移動や切り替えで立ち止まる場面が増えます。

場所の情報、作業の手順、周囲の人の動き——すべてが初見で、どこに注意を置くべきか定まりません。

情報がばらけ、優先順位が立ちにくい状態になります。

慣れた作業でも、場所が変わると手順が飛ぶ

慣れた作業でも、環境が変わると手順が飛んだり、うっかりしたミスが増えます。

「この作業は得意だ」と感じていても、環境が変わると「型」がうまく機能しなくなる。

手順の一部が抜け落ちたり、いつもと違う順番で進めてしまったりします。

私の場合、場所や環境も「型」の一部になっていると感じました.


第3章 つかみにくくなる条件・つかみやすくなる条件

つかみにくくなる条件

  • 初見の話題が多い(経験した型がない)
  • 環境が変わる(場所・音・動線の違い)
  • 割り込みや中断が多い
  • 優先順位が明確でない

つかみやすくなる条件

  • 手順書や見取り図がある
  • 作業環境が固定している
  • 重要箇所が先に共有されている
  • 繰り返しのある作業

第4章 理解しておくと役立つこと

「単純作業が得意」は誤解かもしれない

ASDは単純作業が得意と言われることがあります。

私の実感では、単純さそのものより、既存の型が効いているかどうかが重要です。

慣れた環境で繰り返しのある作業なら、要点を押さえやすく、安定して取り組めます。

「単純作業が得意」ではなく、「型がある状況で力を発揮しやすい」の方が近いと感じます。

「できる・できない」は状況で変わる

要点のつかみやすさは能力だけでは説明できません。

状況によって大きく変わります。

同じ人でも、「型」がある時とない時では、まったく違う印象になることがあります。

この違いを先に押さえておくと、自分の特性を扱いやすくなります。


おわりに

要点をつかみやすい時は、頭の中の「型」が機能して全体が立ち上がっている時。

つかみにくい時は、慣れない体験が重なって情報が散らばっている時。

違いの構造を知っておくと、事前に見取り図を用意する、実行を一列で進める、といった準備で崩れにくくできます。



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